「フリーランスは休むのが下手」

いわなみ家の話

第44話

「フリーランスは休むのが下手」

 

「就労証明書」を作成しています。

就労者(ワタシ)は職場の担当者や上司(ワタシ)に作成を依頼します。注意書には「就労先事業者(ワタシ)に無断で作成し又は改変を行ったときは、(ワタシが)刑法上の罪に問われることがあります」とのこと。

自営業者は自作せねばならないのが、この「就労証明書」。

来年度の、放課後児童クラブ登録のために役場に提出します。役場担当者によると、会津美里町の子育て世代の共働き率は9割。就労証明書を提出しても、労働時間が短かったり、子育てに祖父母の協力が得られると判断されれば、児童クラブに入れないこともあります。

ある1週間で労働時間を計算してみたら、69時間(休憩含む)でした。

「ひと月あたりの労働時間が過労死ライン(月250時間以上)をオーバーしてますよ、聡子さん」

友人にこう指摘されましたが、実はねー、好き放題やってるんですよねぇ。

勤務時間内にラジオ聞いてるし、YouTube流してるし。

通常の事業所勤務よりはるかにストレスなく働いていて、イレギュラーな店休日を含めると、ひと月の労働時間は過労死ラインをこえていませんでした。

とは言え、あとちょっと休みの日を増やさないといけないな~と、書類を埋めながら思いました。

 

先日、自営業者の友人にオススメされたYouTubeは真面目な番組で、「佐久間宣行と‘はたらく’トーク」。

ゲストは、お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さん。

佐久間さんは元テレビ局のプロデューサーで、今年フリーランスになったばかり。森田さんは大手芸能事務所を退所してフリーになり、もう1人の相方とマネージャーの3人で立ち上げた事務所の社長でもあります。

自営業者の私には、この売れっ子フリーランス2人のトークは興味深いものでした。

「仕事と休みの切り替えがわからない。休むのが下手」というリスナーからのお悩みには、

「おれもワカラン。休みの日になにしていいかワカラン(森田)」。

さらに、森田さんは正直なことに

「フリーになって休みがない自分にちょっと酔ってる部分もあるんですわー」。

確かに。フリーランスで休みが余るほどあったら仕事がないってことだもんね・・。

森田さんが言うように、「休んでもうた(休んでしまった)」と、休みの日にしたことに罪悪感を感じてしまうことが、以前の私にもありました。

解決策として、一歩大人の佐久間さんはこう言います。「仕事の延長線で楽しいことを休みの日にしてみる。仕事上、勉強にもなるし、糧にもなって、楽しいこと」。

仕事が好きで休むのが下手なフリーランスには、このアドバイスはいいなと思いました。

 

ということで、ミスタードーナツではどんな秋の新商品が出ているか、仕事の延長線としてお茶してきます!

 

 

 

 

 

「イケないパン」

いわなみ家の話

第42話

「イケないパン」

白状します。

塩を入れ忘れたパンを大量に焼いてしまったことに気づいたとき、ある邪な感情が起きたことを・・。

山食の生地は、もちろん文字通り山食パンにもなりますが、

「やっこいあんバタサンド(1つ270円)」や「アーモンドトースト(1枚250円)」にも変化します。

あんこと有塩バターたっぷり挟んでるからイケるんじゃないか・・?アーモンドバター塗ってるからイケるよね・・?

この場合、イケるというのは、「なんとかクリアできる、なんとか通過できる」という意味の関西弁です。

売上金に目がくらんだ?情けない。

 

「送ってくれたら塩ふりかけて喜んで食べるよ!」

「高血圧予防パンとして売れば?」

わたしを案じて救済策を提案してくれた友人たち、ありがとう。

パンは「粉、塩、水」が三位一体となって成立するもの。言い換えれば、そのどれかひとつが欠けるとパンにはならない(と、私は思う)のです。

塩は、粉に対して1.8%程度しか入っていませんが、塩が入ることで初めて、粉の風味が立ち、天然酵母の複雑な旨味が再現されます。

昆布と鰹節でとった出汁に、ひとつまみの塩を入れるだけで、ごちそうスープになりますよね。塩がなければ、日高や枕崎が泣きます。

 

迫る開店時間。

きれいに整列したアーモンドトースト20枚から、1枚を手に取り、目をとじてかじる。

イケるわけない。1円もつけられない。

かくして、定刻10時30分には、邪な感情を吹き飛ばしてお客様の前に立つことができました。

売らなかったパンたち、どうしたかって?

無塩パンでもわたしの分身。どうしても燃えるごみには出せませんでした。

コンポストに放り込みました。

次の春にはウチの庭、小麦畑になってたり、山食の花が咲いてたりするかも!

「歯と塩」

いわなみ家の話

第41話

「歯と塩」

 

パン生地を仕込むとき、一番目に留まる場所に「歯と塩」と大きく書いたメモ書きを貼っています。

歯は、担当の歯科医から「いわなみさーん、パンやってるときも歯くいしばってるんでしょうねぇ。歯が削れてきていますよ」と注意を受けたので、意識して歯と歯を離すようにしています。

歯はさておき・・。

塩は、「生地への塩入れ忘れ注意」です。

なのに、なのに、やっちゃいました。

 

山食9斤分、小麦粉にして2800グラム、山食生地を3種類のパンに変えると、売り上げは9900円分。パーです。

開店前、子供たちといつものように山食の端っこを朝ごはんに、ひと口かじった瞬間。

「あーーっ、しまったー、やってしまったーー」

両手で顔を覆い天を仰ぐ母に続いて、パンをかじった娘たちもすぐに気がつきました。

「なんか・・味、しないね」

 

自家製天然酵母の力で十分に生地を膨らませるため、いわなみ家では塩を「後入れ」しています。

これ、ちょっとしたパン用語で、発酵を遅らせる要因となる塩を後から入れることで、スムースに発酵を促します。

「後で塩入れよう」

の合間に、洗濯物を干し、小3の漢字ドリルに目を通し、小1の音読を聞き・・。

いやいや、そんなの言い訳で、全ては私の慢心が招いたミスです。

ただ1つの救いが、販売前だったということ。

無味のパンを販売していたら・・と思うと背筋が凍ります。信用を失うところでした。

その日の販売では「パンとして食べないで、パン粉にしてください!」と念を押してご希望のお客さんに差し上げました。

せいぜい、ハンバーグのつなぎです~。

 

ちなみに、お昼はカップ麺でした。

下の子に、なに食べたい?と聞くと

「しょうゆのカップラーメン。だってかえちゃん、朝、塩たべてないもん」

くーっ。さすが味の分かるオンナ。

痛いとこついてくるー!

お母さんまだ立ち直れてないんだよぉ

 

 

「リビングが片付く時」

いわなみ家の話

第40話

「リビングが片付く時」

先日、友人から雑誌「天然生活」をもらった。

10月号の特集は「収納にひと工夫ある家」とだけあって、日々の道具を、竹やアイアン(鉄)のバスケットにうまく収納する例を写真とともに紹介。

茶色やシルバーで統一されたリビングにキッチン。

ほほぅ、素敵~。

はぁ、理想~。

と、ページを進めていく手が早まる。

「こんなの出来っこない!ありえなーい」

バタンと雑誌を閉じて、我が家のリビングと台所を見回してみた。

 

「さわるな」の注意書きのある制作中のレゴ、「見ないで」の注意書きのある私への誕生日プレゼントと思われる折り紙。靴下片一方だけ。国語三(下)、自由帳。

娘らのせいばかりにもできない。

製粉業者への注文付箋、明日のラインナップ予定メモ(冷蔵庫)、各種小麦粉、乾燥中で広げたままのタッパー。

体温計、部屋干しハンガー、ついに夏を越してしまった石油ストーブ。

生活感がないどころか、生活感しかない。

以前、とある雑誌社から取材を受けたとき、カメラマンに、ありとあらゆるリビングのこういうものを、取り払われた。

おかげで、掲載された1枚は、「完璧にリフォームされた古民家のリビングでくつろぐおしゃれ夫妻」になったけど。

あの1枚やこの1枚は、ほんとうのリビングの姿じゃないことを知っている・・(笑)

 

最近は、パン屋(日曜日と火曜日)のあとに、私や古民家に興味があって訪れる方がちらほら。

「どうやってお店はじめたんですか?」

「工房を見せてもらっていいですか?」

「古民家に興味があって・・」

工房見学ノープロブレム!

ありのー、ままのー、でよければ。

 

ただし、午後2時は睡魔がやってきまして、ワタシは機能不全となります。

よろしくご理解ください..zzZZ

 

 

 

 

「ハハの味」

いわなみ家の話

第39話

「ハハの味」

 

♪ママ、ママ、ままどおるぅ~

笑顔いっぱいママの味~♪

このCMソングを知らない福島県民はモグリですね・・。

福島の銘菓「ままどおる」は、甘くてミルキーな味。

「ねー、ママー、ママのあじってなんのことー?あじしないけどー」

まじめくさって私の腕をペロッと舐める小1次女。どこまで純粋なのよ。

「ママの作る食べ物でいちばん好きなものってことよー。なに、なにー?」

 

近所の田んぼは黄金色に光り、続々と稲刈りがはじまりました。

私がこの季節、無性に食べたくなるのは、母のおはぎ。

ワタシの実家は、お彼岸とは無縁そうな、海が見える高層マンションですが、母は毎年、小豆を炊いておはぎを作ってくれました。

 

  1. 水で湿らせ、固く絞ったさらしに、あんこを乗せたら、さらしの端っこを使ってあんこを広げます
  2. あんこの真ん中に、軽く潰して丸めたご飯(もち米と白米を半々)をおいて、さらしごと、クルンと包み・・
  3. さらしをゆっくりはがせば、おはぎのできあがり

毎年のように「食べたーい」とLINEしてますが、帰省できるのはいつのことやら。

 

で、小1の答えが秀逸なので、ぜひ聞いてください!

「かえちゃんのママのあじは、ママのパン!」

万歳。拍手。満点回答。

 

それをそばで聞いていた小3姉にも同様の質問をしたところ、

「んーとね、お弁当に入ってる、ソースカツ!」

うん、うん!

それ欠かしたことないよね、お母さん。マルハニチロの、6個入りの、あれあれ!

思いっきり冷凍食品ですけど~。

ハハの味は、ソースカツ(自然解凍も可)。

子供の舌は正直です。