「テントさえあれば」

いわなみ家の話

第109話

「テントさえあれば」

 

パン屋の屋根が破れて雨漏りがするかと思えば、ついには柱が抜けてしまいました。

でも大丈夫!ポチっとすれば翌日には新しいの届くんで。キャンプ用のタープテント(2.5×2.5m)が、いわなみ家の要です。

5年前、ここ会津美里町(旧高田町)へ移住することが決まったと同時に、高田のメインストリート(!)にある商店街で、空き店舗を探してはみました。

役場の方から教えてもらったのは、地方銀行の支店跡地や、元日用品店など。

昭和レトロな外観の物件もあり、心ひかれましたが、「やっぱまだいっか…」と即決はできずにいました。

当時、下の娘は幼稚園児。寝床からこっそり抜け出してパン作りをしようにも、かなりの確率で目を覚ましてくれました。アタシの姿が見えなければ「ママァァ~!」と手のつけようがなくなりました(今は布団を引っ剥がしても起きない、笑)。

自宅から車で10分のところに店舗を構えたとしても、深夜に出勤するのは無理だろうと判断し、「店舗兼住宅」の今に至ります。

住宅の一部を店舗に改装するほどの資金もなく、タープテントが店。晴れた日は庭にタープを広げて、または縁側で。雨の日は玄関前で、夫がクルマで出かけたら「しめしめ」と、夫のガレージで。

開業から3年たった今、このフリースタイルが板について気に入っていて、ずっとこのままでいこうかと思っています。

毎週2回、3年ほど使い倒したタープテント。店舗家賃が12000円(4000円/年)と思えばもうけもんです。

 

 

 

「元家主たちの置き土産」

いわなみ家の話

第108話

「元家主たちの置き土産」

先日、我が家の固定資産税を全納で支払ったことを実家(福岡市)の母に伝えたところ、

母「それ、月額でしょう?」

私「いや年額だけど…」

たいそう驚かれました、笑。

博多湾を一望できる実家のマンションは、この古民家の10倍以上の固定資産税だそうで…。

税制上は、無いに等しい我が家の資産価値ですが、私にとっては埋もれたお宝がザックザク。

雪解けから間もない4月にはスイセンやフキノトウ。続いてムスカリ、チューリップ、ヒヤシンス。そして5月の今、シャクヤクが濃いピンクの大輪の花を咲かせています。

全て、元家主さんたちが球根を土に埋めて世話をしてきたのだと思うと、改めてラッキー物件をゲットしたものだなぁと思います。

でも、いいことばかりじゃないのが、格安物件。

移住初(令和1)年度は、この5月の運動会シーズンに、我が家の屋根裏でも毎晩運動会が繰り広げられていました。

チュー学校の運動会。

人間たちが寝静まったころ、アイツらは屋根裏で活動を始めるのです。あっちへコツコツコツ、こっちへカタカタ…。気味が悪いったらないのです。

チューコロ、デスモア、一発退場、強力粘着シート…。ホームセンターで買い漁った各種毒エサとトラップを家じゅうに仕掛けると、なんと翌日には息絶える寸前のチュー太郎の姿が。

当時小1だった長女は彼の目をのぞき込み、「けっこうかわいい、ミッキーとは違う」といって詳細にスケッチしていました。

パン工房建設予定地でも出くわしたので、血の気がひきました。開業予定の冬までにはデスモア(もっと死んで)いただかなければ、と。

(この家の主はチュー太郎一家だったのか)

現家主の執念が実ったか、一家は姿を見せなくなりました。思えば、パン屋の材料は彼らの好物(小麦粉、ナッツ、ドライフルーツ)ばかり。すべての材料を密閉容器に保管し直したのがよかったのかもしれません。今でも気は緩められませんが。

この春から我が家の周りを野良猫「かのこちゃん」がうろつくようになりました。エサは与えないにしてもかわいがっています。チュー太郎ジュニアが戻ってこないように、番ネコよろしく。

「あの人も起きている」

いわなみ家の話

第107話

「あの人も起きている」

個人事業主でひとりパン屋をやっていますが、実は一人でパンを焼いているのではありません!

土曜の夜は、カスちゃんワカちゃんと。

月曜の夜は、フワちゃんと。

木曜の夜は、野田さん村上さんと。

受験生でもない限り聞かないであろう深夜1時や3時からのラジオ「オールナイトニッポン(ニッポン放送)」。パン屋も聞きます。

「こんな時間にあの人も起きてる!」という事実が励みになって、深夜でも目がパッチリ。ちょっと寝坊すると、もう放送が始まっていて、「すみません、遅刻しました」と同僚に謝りたい気持ちにさえなります。

いつでもどこでもお気に入りのラジオ番組が聞けるアプリもあり、便利な世の中ですが、radikoでは目は覚めない。

パーソナリティー多忙につき、「本日の放送は、事前に収録した録音放送です」なんて日には、ふてくされて二度寝したくなります。

先日、LINEがピコンと鳴って「新しいお友達」が追加されていました。新しくもない、10数年ぶりに見るなつかしい名前「サブロンO川さん(イニシャル隠しきれてない?笑)」でした。

主婦の岩波さんと、脱サラのO川さんは、10年以上前、東京駅ナカのパン屋で一緒に働いていました。「生島ヒロシのおはよう一直線(TBSラジオ)」を聞いて朝6時に出勤、退勤時間はあってないような職場環境で、日々小麦粉まみれになっていました。

当時、O川さんは2児のパパ、岩波さんは子なし、それでもオトコのO川さんのほうが手荒く扱われ、残業もこなしていました(労基法どうなってんねん!)。

2増えて4児のパパになったO川さん、今や、東京ベイエリアの「印の無いベーカリー(これも隠しきれてない?笑)」のマネージャーで、12人ものスタッフを抱えているそうです。背負うものが多いほど頑張れるタイプかな。元気そうでよかった!

こちらのスタッフは、販売員が2名のみ(8歳、10歳)。

生地の仕込みは一人では寂しいので、相棒を決めています。

月曜の朝は有吉さんと「有吉弘行のサンデーナイトドリーマー(JFN系列)」

木曜の朝は山下さんと「山下達郎のサンデーソングブック(東京FM)」

土曜の朝は藤原さん美伸さんと「impress GOOD FRIDAY(福島FM)」

月曜にサンデー、木曜にサンデー、土曜にフライデーなのはradikoだからね(いずれも秀逸ラジオ番組!)

さて、今日は休日水曜ミスドデー。もちろん相棒は菅田さんです。

 

 

 

 

 

「失敗から学ぶパン作り③四大失敗」

いわなみ家の話

第107話

「失敗から学ぶパン作り③四大失敗」

失敗辞典なるものがあったらいいなぁ、と思います。

この失敗の原因はコレかコレ、のような。

以下に四つの代表的な失敗を挙げます。

(ベーグルの失敗と原因についてはこちら)https://iwanamike.com/archives/16416

スランプ中の方のお役に立ちますように。

すべて、原因として疑わしい事柄を挙げています。原因はコレだ!と私は断言できませんが、ぜひしらみつぶしにやっつけてみてください。(その苦しさよーくわかります)

1、膨らまない

  • 天然酵母種の発酵が未熟かも
  • 一次発酵が足りないかも
  • 二次発酵が足りないかも
  • 二次発酵やりすぎちゃったかも
  • 焼成温度が高すぎるかも

(こね不足やグルテン不足は、膨らまないことの大きな原因にはならないと失敗マスターの私は思います)

  • スパイスのせいかも(シナモンなどは発酵を遅らせます)
  • ハード系のパンのとき蒸気不足かも(250度などの高温で焼くハードパンの場合、オーブンに入れた直後に蒸気がないと、すぐに生地が焼き固まって、その後膨らみません)

 

2、焼き色がつかない

  • 二次発酵やりすぎかも
  • 砂糖の量が足りないかも
  • 焼成温度が低すぎるかも

(220度あればきっちり焦げ茶色になりますが、オーブンの扉を開けたときに20度くらい簡単に下がってしまいます。オーブンの表示が220だったとしても実際は200とか。)

 

3、焼き上がりのパンに厚みがない、ダレている

  • 生地の水分が多すぎるかも(高加水のパンはむずかしいねぇ)
  • 二次発酵の温度が高すぎたかも
  • 二次発酵のやりすぎ
  • 塩を入れ忘れてるかも(ヒー!)

4、酵母が育たない

  • 材料(フルーツやドライフルーツ)が古い、酸化しているかも
  • 砂糖が足りないかも
  • 水が冷たいのかも(スタートの水はぬるま湯が好ましい。最初に、酵母が起きやすい温度にしてあげると後々スムースです)
  • まれに、新築や引っ越し直後の家では酵母が起きにくいことがあり(常在菌がいないのね)
  • フルーツの果肉がドロドロになる系(桃とか)は発酵したのか分かりにくいからかも

春が来て花が咲いて果実が成ると、いろんな酵母を起こしたくなりますね。

おすすめは、ベリー系のもので完熟したもの(腐る寸前!)。サクランボ、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ぶどう全般。酵母起こしに使う水をぬるま湯でスタートしてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

「特定分野の語彙力」

いわなみ家の話

第106話

「特定分野の語彙力」

 

「ケンちゃんがね、バスのこと、ハスって言うんだよ~。パトカーのことは、ハト。可愛いよね~」

乗り物好きな近所のケンちゃんの成長を喜ぶウチの娘はこの春3年生。その3年生も、語彙が増えてきました。

(柿の木の剪定をするために、ハシゴに登っている父に…)

娘「パパあぶないよ!落ちたらコウトウブをキョウダして、死にイタルよ」

(湯船に浸かって温まっているときに…)

娘「じゃーねー、ジョウシュウ蕎麦とシンシュウ蕎麦だったら、ママはどっちが好き?」

母「えっ?上州と信州?そりゃー、いわなみ家は信州でしょ」

娘「長野県警と群馬県警が県境で捜査してるときに蕎麦の食べ比べしたんだよー」

娘の姉「ママー、(曇った)鏡みて。ダイニングメッセージ書いたから!」(ちょいと、お姉さん、死ぬ間際の人が食卓でメッセージは書かないよ、笑)

(またある時は、ちょっと悲しい顔をして…)

娘「あのね、先週はヨーコが血を流して倒れてて、今週はサトコがタサツタイで見つかって…」

縁起でもない!ヨーコは長女でサトコは私の名前や!

特定分野の語彙が発達中の彼女、愛読書は「名探偵コナン」。朝、寝起きでコナン、トイレの中でもコナン。

登場人物をざっと紹介すると、主人公の江戸川コナンをはじめ、小五郎のおじちゃん、阿笠ハカセなど。で、行きつけの喫茶店は「ポワロ」といった調子。

江戸川乱歩も、コナン・ドイルも、明智小五郎も、もちろんアガサ・クリスティも読んだことはない母ですが、娘は超が付くコナンオタク。

ある日の午後、昼寝から覚めてスマホのアラームを止めようと手を伸ばしたら、そばには「かいとうX」より手紙が…。

「お前が世界で一番大事な2つのものをあずかった。返してほしければ暗号をとけ」

家中の暗号を解いて行き着いた先には、両手を後ろにロープで縛られ、口を粘着テープで塞がれた、我が子2人!

私が部屋に入ったとたん「うー、うー!」と苦しそうな声を出すので、近づいてみるとガムテには空気穴が(笑)なんてよくできた自作自演。

母「ちょっと鑑識さんに電話しとくわ。現場検証してもらわなきゃ」

娘「そう!しもんとるとき、耳そうじのフワフワのやつ使うよね。小麦粉みたいなのつけて」

母「そうよね!」(笑いこらえ)(さすがパン屋の娘、小麦粉!)