「大雪営業の末にー。」

いわなみ家の話

第137話

「大雪営業の末にー。」

ワタシの周りの会津人に聞き取り調査をしたところ、

「嫁に来て以来、こんなの2回目(70代女性)」

「子供の時、じいちゃんが屋根に登ってた記憶(46歳女性)」

「初めて!(30代後半女性)」

「いーや、70年ぶりじゃねぇか?(80代男性)」

どうもこの雪、40年(70年?)ぶりのようです。

古民家の屋根と、落雪やら積雪やらが一体化して、まるっと一軒家が1つの山になっています。庭に2メートルの積雪。

この雪、5月まで残るでしょうなぁー。

  • 新緑の庭を目前に、縁側にパンを広げていた5年前。
  • 暑さと日差しに耐えかねてタープテントを広げてお客さんを待っていた4年前。
  • ついに寒さにも耐えかねて、家の中に引っ込んでしまった3年前。

暑さにも寒さにも軟弱なパンと店主は、年々場所を変えて、現在の「注文(予約)中心のパン屋」に落ち着きました。

外でお客さんを順番待ちさせることもなく、好きなパンを好きな個数だけお買い物していただけるようになり、大変好評でした。

でした、が、この雪で駐車場が埋まり、ついには道も寸断され、一時は陸の孤島に。

なんのこれしき、へこたれないぞ!とお届けパンを募ったら、【ヤマト運輸集配停止】のお知らせ。無敵のクロネコさんを過信していました。プロのドライバーでさえお手上げなのね…。

嫁ぎ先を失った90個のパン、どうすれば…降り続く雪を恨めしく見やって、途方に暮れました。

毎朝6時に通学路を除雪してくれるじいじ、スクールバスまで付き添ってくれるタエコさん、屋根の雪おろしを手伝ってくれたコジマさんとケイコちゃん、駐車場を貸してくれるアヤコさん、雪にハマった夫の車を救出してくれたシンイチさん、マロちゃんママ、エミちゃん。

我が子同然に大事なパンが、ご近所のみなさんのところにお嫁に行けて、八木沢の母は嬉しく思います。

スコップ1本で雪かきする、私ひとりの非力さよ。自然には抗えませんが、このパンがつないでくれるご近所さんとのつながりが、どうにかこうにか、ここで暮らしていくための命綱だと身にしみて感じました。ありがとうご近所さん

 

 

 

「マットレスとマットレスの溝で自立を考えた」

いわなみ家の話

第136話

「マットレスとマットレスの溝で自立を考えた」

ここ1年ほど、マットレスとマットレスの溝で目覚めてきました。溝の下には、冷たい畳が待つのみ。

右の人(小6)と左の人(小4)から羽毛布団を巻き取られ、腹の上には布団一枚どころか、左右から伸びた立派な脚がのっかっている状態。

8時間寝ても9時間寝ても、寝足りない理由は明らか。

2組の布団で女子3人、川の字で寝始めたのは、左右の人たちがオッパイ星人だったころからだから、かれこれ10年。3時間おきにドリンク補給が必要な時期もあったっけ。

でも、もうオッパイ出ませんて!

川の字を10年継続してもなお、「今日は私の布団に来て!」と、ママの取り合いをしてくれる姉妹たちですが、もうええやろ。

「溝だよ?畳だよ?ママ、かわいそうすぎない?」とママ本人、夕飯時に訴えたところ、あっさり訴状は認められ、もう一組布団を購入することに。いえぃ。

深夜ラジオを聞いてパンを焼くのがこの上ない愉しみのパン屋店主ですが、なかでもオードリーのオールナイトニッポンは欠かせない番組。言わずと知れたオードリーは若ちゃんとカスちゃんの漫才コンビです。

その番組中で、ちょうど年末に若ちゃんが「羽毛布団に続き、マットレスも新調した」話をしていました。これだけ売れて稼いでも、お金の使い道がわからない若ちゃんは「睡眠大事。寝具にはバンバン使っていく」と宣言していました。

若ちゃんに続けとばかりに、早速、お値段以上ニトリで最高ランク…から2個下の寝具を購入。その日の夜が母子自立の時と定まりました。

場所も別々に。姉妹は子供部屋で、私はリビングの一角で、それぞれ眠ることにしました。

妹のほうは、ちょっとセンチメンタルにしていたのがキュンとしました。ベストメンバーのぬいぐるみを従えて。

今日から別々かぁ…嬉しさ半分、さみしさ半分。「寝るときに、絵本の読み聞かせしてあげよっか!」と提案したのは、寂しいママ本人です。

オッパイ星人時代に何度も読んだお気に入りをそれぞれ1冊選ぶ姉妹たち。オヤスミ。

…翌朝

「なんかめっちゃ寝起きスッキリなんだけど!」

3人とも同じ感想とはね〜

質の良い眠りでいいパン焼けそう。

いわなみ家5年目の2025年も、ひとつよしなに。

 

 

 

【12月1日㈰のパンご予約受け付けます】

【12月1日㈰のパンご予約受け付けます】

12月1日㈰のパンは以下のとおりです。

11月30日㈯午前11時までにメールでご注文くださいね

eggsatoko@gmail.com

  1. パンドカンパーニュ
  2. ノアレザン
  3. ナッツとチーズのハードパン
  4. 塩あんこベーグル
  5. チョコクランベリーベーグル
  6. ブルーベリーベーグル
  7. 黒ごまチーズベーグル
  8. マロングラッセのバトン
  9. ナッツとチーズのバトン
  10. はちみつナッツのいちじくバトン
  11. ショコラオランジュ
  12. オレンジピールとクリームチーズのパン
  13. くるみあんパン
  14. カレーのフガス
  15. チーズフォンデュのプチパン
  16. いわなみ家のグラノーラ

「救世主ミナ」

いわなみ家の話

第135話

「救世主ミナ」

今年も、3年連続でミナちゃんからシュトーレンのご注文をもらい、九州へお届けしました。

ミナちゃんは、30年以上前の、私の救世主。

中2の1学期、朝、学校に着くと、下駄箱に自分の上靴がないのに気が付きました。

職員室へ行くと、ミナちゃんと担任がいて、ミナちゃんは「エグチの上靴が!」と憤慨していました。

エグチのソレは、蛍光ピンクのポスターカラーに塗りたくられ、中敷きには無数の画びょうが敷き詰められていました。

「エグチが見てしまう前に」と、私より早めに登校したミナちゃんは上靴を持って職員室へ駈け込んだとのことでした。

上靴を自宅に持ち帰り、夕飯の支度をしている母の背中に事情を話したことはなんとなく覚えています。

「もうじき引っ越すからね」。

エグチ一家は、新しいマンションを買って中2の夏には引っ越しを予定していました。逃げたいと思ったころにタイミングよく、陰湿ないじめから立ち去れたのです。救世主ミナと、逃げ場があったおかげで、私は新しい中学校でやり直しができました。

もうお互い母になって、住む場所も離れ、あの時の話をすることはないにしても、彼女に救われたことをいつまでも忘れません。

早いもので私の長女も来春から中学です。

今は、小学校の卒業文集委員の一人になり、【独断】を敢行しているそうです。

文集のページには、自己紹介から将来の夢までさまざまなページがあり、「なんでもランキング」というものもあるそうです。クラスのみんなにアンケートを取って、「モテる女子ランキング」「おもしろい男子ランキング」などを1~3位まで書き出すんだとか。

「…いいけどさ、大丈夫なの?それ…。口出ししたくはないけど、お母さんあんまり好きじゃないねぇー、それ」

とは言っておきました。

数日後、アンケートの集計でもしたのか、「ランキングに入らない子が出てきちゃった」と悩んでいる様子。

いつぞやの母の小言を思い出したかぃ?

さらに数日後、霧が晴れたような顔をして帰ってきました。

「よーちゃんの独断で、新しいランキング項目作った。あの子が1位になりそうな項目をね」

独断上等。文集委員の権力の行使(乱用?)!

でかした。

あの子は、人一倍繊細で、相手の気持ちを測りすぎるほど察して、先のことが不安になってしまうんだよね。そして今は学校に行かない選択をしているよね。「だれにでも優しい人ランキング」、たしかにあの子が1位だね。

今学校に行(かない、けない)子へーーー。

逃げ場はあるかい?安心できるスペースはあるかい?救世主ミナや文集委員ヨーコみたいな人は、必ず近くにいるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残金35円の旅」

いわなみ家の話

第134話

「残金35円の旅」

町の企画で、栃木県への小学生バスツアーが開催された。小学4年以上は保護者の同伴なしでもOKとのことで、次女の希望もあり、「いっておいで~」と早朝に送り出した。

参加費と小遣いを持たせて。

行動予定表を見ながら、

「もう到着したころかな」「お昼かな」「自由時間はじまったかな」。クールに見送ったはずなのに、ママやっぱり心配。

予定表どおり、18時過ぎに、ニコニコ顔で帰宅。背中になにか、レジ袋を隠しながら…

「35円しか余らなかった!」

レジ袋には「とちあいか イチゴチョコ大福(18コ入り)」が入っており、背中のリュックには見慣れないキーホルダーも。「これとこれ買ったの~」。

言われもしないのに、レシートと残金も提出。ナデナデ。

そーかいそーかい。楽しかったのね~。

ひととおり土産話を聞いたころ、

「AちゃんもBちゃんもCちゃんもDくんも、こーんなおっきい、ふわふわの、3000円のぬいぐるみ買ってた」との報告。

「えぇ?みんな、おこづかい幾らくらいもってきてたの?」

「1万円とか」

「はん?イチマンエン?」

ち、違いすぎる。家庭の金銭感覚はどこも違うものだが…。

ぬいぐるみを抱き抱えてレジに並ぶ級友を横目に、残金わずかの彼女の心中は…。胸が締め付けられそうになった。

「かえちゃん、みんなが買ってたとき、寂しい気持ちになった?」

「うん、ちょっとなったけど…ずっとは(そのぬいぐるみを)かわいがれないと思って、いいやと思った」

ここに、ひっそり我が子を表彰します。

「そっか、ちゃんと考えたんだね。家族で行ってたとしても、ママは買ってあげないと思うよ。わかるよね?」

「うん、わかる」

続いて、二度目の受賞です(笑)

このやりとりを聞いていた本日留守番の姉(小6)が一言。

「うちはうち、よそはよそ!」

おい!君はどこのオバサンか~

そのフレーズどこで覚えたん?あ…このオバサンか。

イチゴチョコ大福がやけにあまずっぱく感じる夕べでした。