「サブスクの見直し」

いわなみ家の話

第150話

「サブスクの見直し」

先日の日曜日、玄関先に「本日のパン屋は14時からです!」と貼り紙をして、朝食の皿もそのままに、急いで車に飛び乗った。

「筆、墨、持った?」

「持ったよ。レッツゴー!」

毎年恒例、書道教室主催の「席書大会」なるものに出場するため、鶴ヶ城の文化センターに向かった。

セキショタイカイというのは、「大人数で、ひとつのお題を、決められた時間内に書いて、その日のうちに受賞作品を選評する書道大会」らしい。幼稚園生から高校生まで200名超が集まった。

「席書!」の合図で筆を墨に浸す、我が家の次女カエチャンの顔は引きつりまくっている。保護者も観覧できる(写真も撮ってよい、カシャッ)のだが、わたしは早々にその場を離れた。見てられないよ〜。

20分の席書のあと、会場から出てきた彼女は

「名前のところがダメだったー、あーーん」と言って上気した顔をしていた。

一方、「んじゃ、行ってきまーす!」とヨユーの声の主は長女。これまでに何度も表彰され、うちの土間にはトロフィーや賞状がズラリ並びきれないほど。

中高生の部は後半の席書だ。

行書なんてどーやって書くんだ⋯うまいなぁ。娘らと同じタイミングで6年前から私も書道教室に通っているが、とうに追い越されている。

「どれも上手くいった(Vサイン)。結果たのしみ」。そうかい。後半の20分は待っているこちらも短く感じられた。

軽く腹ごしらえをしたのち、表彰式会場へ。

5年生の部。下の方の賞から順に名前が呼ばれ、次々に子どもたちは壇上へ。カエチャン?まだ呼ばれないじゃん!もしかして?

大賞ではないものの、本人もびっくりの受賞となり、軽い足取りでトロフィーを抱えて戻ってきた。嬉しそう。

続いて中高生の発表。

と、ここで早々に長女の名前が呼ばれてしまい、3人とも顔を見合わせて「そんなはずじゃなかった⋯」。初めての無冠。

妹を喜んであげたい一方、姉には何と声をかけよう?

「よーがんばった。お母さんならあの緊張には勝てないわ。すごいよ。お母さんはさー、別にあんたたちに書道家になってほしいわけじゃないよ〜。このドキドキとかヤッターとかクッソーとかを味わうのいいでしょー。まだ書道続けたい?そっか、なら、月謝払うよ(笑)」

サブスク、定額制のサービスのこと。Amazonプライムや新聞購読、さらには美容液やコンタクトレンズも私の現在継続中サブスクだ。

そして習い事もサブスクのひとつだと思う。なんと計算をしたら、書道教室のサブスクにこれまで100は支払っていることになる。

サブスクは力なり。彼女たちのやる気を見たので、書道教室は続けよう。

先月始めた、目元専用美容液。効果あるんかな?これやめようかな〜。いや、継続してこそ?サブスクの見直しは悩ましい

 

「パンでご飯を食べる」

いわなみ家の話

第149話

「パンでご飯を食べる」

先日の日曜日、入店してきたお客さんが土間をぐるりと見渡したあと

「パンだけで、生活されているんですか?お仕事のほう…」と。

「ええ、はい(笑)パンだけでご飯食べさせてもらってます」。

店主の面目にかけてちょっと補足説明を。

日曜と火曜がパン屋で、木曜と火曜がお届けパン(発送)またはパン教室の一週間で生計を立てています。

シンジラレナイ・・の表情が隠せないお客さん、なおも不思議そうに古民家の玄関や土間をチラ見。

「お家は、別のところに?」

「あー、ウチは、店舗兼住宅です。ここは玄関。家族も使います」

玄関先にのれんを掲げ、簡易的な机を出してそこにパンを並べ、お客さんからお代をいただいてます。

店舗兼住宅はこだわっていた訳ではありませんが、結果的には、私にとって、働きやすいベストの形だったようです。

例えば街中にテナントを借りてパン屋を始めていたら、続かなかっただろうと思います。賃貸料を払えない・子供の面倒を見られない・睡眠時間が減る、の三重苦に陥っていたことは想像にたやすいです。

(パジャマでも仕事できるのが、店舗兼住宅の最大の魅力)

続いて、パンを買ってもなかなか帰ろうとしない別のお客さん。ご主人と2歳くらいの娘さんは外で待っているようですが?

「ひとりで、パン屋をしていらっしゃるー、ですよね。お話しをききたくて、福島市から来ましたんです。終わるまで、待ってます」

どうも、お悩み相談のようです(^^)

接客の合間を縫って、少しずつ話を聞きだしていくと、

「出身はモンゴルで、餃子の店を出したいんです。餃子、皮から」

はいはいはい、いいじゃないですか「餃子でご飯を食べる」(これ、シンプルに最高の夕飯、笑)

若いころ、出張先のウランバートルで食べた、ホウトウのような太麺が入ったスープがとてもおいしかったことを思い出しました。たしか羊肉の出汁でした。そう、小麦のおいしさをガツンと味わえるのが、手作りの水餃子ですよね。

私のアドバイスはこうでした「いきなり店というより、お家で餃子レッスンをしてみたらどうですか?皮から作るなんて、興味ある人いっぱいいますよ。それに、皮を伸ばすときの麺棒の使い方とか、手さばきを間近で見られるんでしょう?お教室、やってみたら?」

彼女の餃子が食べたくなりました。

パンひとつ、餃子ひとつで、ご飯を食べていくことは簡単でありませんが、まずは一人のファン(の胃袋)をつかむことからだと思います。がんばって!

 

 

 

 

 

「腹が鳴るパン教室」

いわなみ家の話

第148話

「腹が鳴るパン教室」

パン屋開業を目指す人向けのパン教室2025、時刻は正午過ぎ。

グゥゥゥ~~

今日もどなたか、正直な生徒さんのお腹が鳴っています。

「お腹空きましたよね~、でもね、二次発酵がいい感じなんですよ。このまま焼成に入りたいので、ちょっとこれでしのいでください!」

講師はカンパーニュ1切れにバター、ジャム、粒マスタードをサッと塗り、コーヒーと共に生徒さんに手渡します。本日のランチ。以上!

一方、10年前にさかのぼり、いわなみ家パン教室2015のランチ。

アールグレイのスコーン、ラムレーズンのスコーン、キュウリとツナの全粒粉パンサンドイッチ、ニンジンオレンジラぺ、ゴボウのポタージュ、豆乳プリン梅ジャムのせ、コーヒーまたはカフェオレ。鶏ハムやリエットを手作りしていた時もありました。

「3人の子をワンオペ育児していたあのころ、月イチのパン教室が私のご褒美、癒しの場でした」と、今でも元生徒さんには懐かしんでもらっております。

が…あの頃には戻らないでしょう。もう、リエットの作り方忘れました、汗

 

元生徒さんで、現在は、予約の取れない自宅パン教室を主宰しているM子さん。彼女が7年前、「いわなみ家レシピで開業したいんです」と勇気をもって話してくれたとき、わたしは二つ返事でOKを出しました。彼女のことを「パン作りや人づきあいに、とってもセンスがある人だなあ」と前々から思っていましたので。

そんなM子さんのパン教室に参加した、開業志望のEさんが、M子パン教室一回目の受講で「あなたはウチのパン教室に来るべきじゃないね」と言われたそうなんです。M子の洞察力、さすがだと思いました。

Eさんはパン店勤務の合間を縫って、M子パン教室や聡子パン教室に通ってくれています。

パン教室には2パターンあって、

①レッスンで集中したあとは、焼きあがったパンを囲んで和やかにランチやお茶を囲む会

②パン作りの腕を上げるためにひたすら生地を触り、腹が鳴ってもおかまいなしの会

M子さんちは、①ですね。10年前のいわなみ家パン教室も①でした。

M子さんはさらに「あなたはここに来る代わりに、聡子さんのところへ行って仕込みとか焼成を見学させてもらうほうがいいでしょう?」とEさんに伝えたそうです。M子、1回目の受講でここまで見えるとは!

パン作りの腕を上げるために、②よりもいいところ、実は知っています。

パン屋のバイトです。お金をいただきながら技術を身に着けられるし、いわなみ家パン教室は正直安くはないので・・考えてみる価値はあります。あ!でも、午前6時出勤がフツーです。

パン店勤務のEさん、いつも5時半前に家を出るそうです。私も若いころ、5時15分には有楽町線に乗って半目でパン屋に出勤していました。

M子や聡子は、パン教室のタイプは違いますが、パンに脳みそを占拠された方へ的確にアドバイスできるよう、今日も酵母を育てながらあなたをお待ちしています(いわなみ家パン教室2026開講は春の予定です)

 

 

 

 

 

 

「ミッフィーの行方」

いわなみ家の話

第147話

「ミッフィーの行方」

毎週水曜日はパン業務が休みなので、決まってミスタードーナツに居座っているパン屋店主です。

カフェオレをお代わりして、ドーナツ1個でじっくり1時間半、本を読めればもう充電完了。

「ドンドンドン、ドンキー、ドンキーホォテー」

軽快なBGMに乗って、カートを走らせます。

卵・牛乳・ベーコン・鶏もも肉、小松菜・えのき・トイレットペーパー…。

お茶した後に、食料品を買って帰れるのがドンキのいいところ。

家族のみんなにトイレットペーパー節約令を出して、ここ数日を乗り切ってきたので、今日は買い忘れのないようにっと。

…と思っていたのに、信号待ちをしている間、車内をふと見まわしてみると、ミッフィー柄のトイレットペーパーが、ない。買ったはずなのに、ない。

ハザードランプを点けてちょっと考えて、10分後にはセルフレジに戻っていました。

私「あの、さっき、買い物したんですけど、たぶん置き忘れちゃったみたいで。(レシートを見せて)このトイレットペーパーなんですけど…」

店員「あ、この、ミッフィーちゃんのですね?」

私「そうですー。ないでしょうか?」

セルフレジ15台あまりを監視する店員のお姉さんの目の前には、液晶画面に何分割もされた各レジの様子が映し出されている。3番レジがスキャンミスをすれば赤く点滅し、お客さんに呼ばれる前にお姉さんが飛んでいって対応する。5番レジは有料レジ袋を1枚取ったようだ。

そんな忙しいお姉さんを、トイレットペーパー12ロール389円で煩わせてしまって申し訳ない。

店員「サービスカウンターにも届いてないので、うーん…。夜までに防犯カメラで確認してご連絡さしあげますがいかがでしょう?」

この時点では、客いわなみが虚偽の主張をしている可能性もあるわけで、ミッフィーは手元には戻りませんでした。

いつもより着信音を上げて待つ晩飯前。ドンドンドン、キタ!

店員「防犯カメラを確認したところ、確かにお客様はトイレットペーパーを置き忘れてお帰りになってました。で、そのあとのお客様が間違って持ち帰ってしまったようで…」

私「え!あらま、そうだったんですか…。じゃ、あきらめるしかないですね(トホホ)」

店員「いえいえ、お支払いはお済みなので、取り置きますよ」

このお姉さんの素晴らしいこと!

今頃、ミッフィー柄のトイレットペーパーでお尻を拭いているであろう人のことを、あくまで「間違って持ち帰った」と表現しているところ。

「んなバカな~間違うなんてことあるかいな!」と思うのはいわなみ家店主のほうです。

そしてドンキが389円の損失になるのに、取り置きしてくれるんですって。いい会社じゃないの!

これからも毎週行くわよ。来週はトイレットペーパーを引き取りに~

 

 

 

 

 

 

 

「秘密の白菜」

いわなみ家の話

第146話

「秘密の白菜」

日に日に、冷蔵庫の白菜が増えていきます。

近所のおばあちゃんが、「白菜あっかよ?(あるかい?)」と言って、持ってきてくれます。

それも、1日に2度3度。ほぼ毎日。

「今日はもらったよぉ、ありがとね」

「そうかい?まーた、忘れっちまってなぁ。だぁめだなぁ。あーっはっは!」

ばあちゃん、明るく認知症が進んでいるようなんです。

「これ何にして食うんかよぉ?」

「そうだねー、今夜は寒いから鍋にしようかなー」のわたしの返答は無視して「おひたしが旨んめぇぞー」と一方的に話して帰っていきます。とほほ。

ばあちゃんの「おひたし」推しは毎度のことで、もはや定番ネタとなっています。

このまま症状が進んで冷蔵庫が白菜だらけになったらどうしよう?

わが会津美里町は、「福島県一認知症にやさしい町」を目指しており、小5の授業で認知症サポーター養成講座が行われたそうです。

「認知症サポーター」に認定された娘から教わったことを以下に紹介します(「認知症世界の歩き方 実践編」筧裕介、issue+design著 より引用)

①Yes, and! まず受け入れる

認知症のある方の発言が「理解できない」「納得できない」ときでも、まず「いいねー」「そうだね」と肯定する。肯定後に気になるところを述べると、相手も受け入れやすくなる。No, but(違う、なぜなら・・)と否定しない

②役者のようにふるまう

認知症の方が生きる世界でのストーリーに従い、振る舞い、声をかける。「お腹が空いたねえ(ご飯を食べた後だったとしても)」「お金はどこに行ってしまったのかなあ?一緒にさがしてみよう(本人が使ったとしても)」。現実世界では間違っていることだとしても、本人の生きる世界では「確かな事実」

③急がない、ゆっくりと

認知症のある方は、会話の理解に時間がかかるため、相手の話が2倍速の映像のように感じることが多い。話すときは、速度を落とし、簡単な単語で(カタカナやアルファベットを避ける)、少ない単語数で。

明日から実践してみようと思う会話

「白菜あっかよ?」

「白菜、いいねぇ。ありがとう(本日2回目だとしても)」

「これ何にして食うんかよぉ?」

「そうだねぇ、おひたしにしようかなぁ(鍋の予定だとしても)」

そうそう、ばあちゃん、白菜のことを秘密にしたがるんです。

「他のもんには言うなよぉ、おめぇんとこだけだからぁ」

ばあちゃんに白菜もらってること、このブログで全世界(笑)に告白しちゃってるけど、内緒にしておくよー。ばあちゃんと私の秘密だねー。