「ロジカル・レシピ(後編)」

いわなみ家の話

第105話

「ロジカル・レシピ(後編)」

くるみパンのレシピは以下の通りですが、大事なことは下準備にあります。ご参照を。

 

材料

  • 強力粉 230g
  • ライ麦粉(粗びき)20g
  • 砂糖 12g
  • 塩 5g
  • 水 166g~
  • ルヴァン種(エキスと粉の比率が1:1.3のもの)70~80g
  • クルミ(しっかりローストしたものを水につける)50g

手順

  1. 強力粉とライ麦粉と砂糖をボウルに準備し、よく混ぜておく
  2. 水(ぬるま湯)にルヴァン種をちぎり入れ1分ほど放置してなじませる
  3. ②を①に流し入れてカードで粉っぽさがなくなるまでこねる
  4. ③を温かい場所に30分くらいおく【オートリーズ】といい、ここで生地が緩んでいきます
  5. ④の生地を引っ張っては畳み、引っ張っては畳むようにこね、塩、クルミの順に練り込む。さらに30分ほど放置して生地を緩ませる
  6. ⑤の生地を引っ張っては畳むようにこねあげる。生地の表面がつるんとなる
  7. 一次発酵へ。生地を大きめのタッパーに入れて高さを測る⑦。25~30度の温かい箱(発泡スチロール箱でも可)や発酵器で、生地の高さが1.5倍くらいになるまで発酵させる。
  8. 【パンチ…水分量の多い生地に力をつける(グルテンをつなげる)ためにする手法。こねずに、生地を引っ張って折り畳む】タッパーの中で、生地を3つ折りにする。むずかしいねぇ!

再び発酵を続け、高さが⑦のときの2倍になれば一次発酵完了。このときの発酵温度は16~20度くらい。温めすぎると、タッパーから取り出して成形するときにベタベタで悲惨なことになります(経験者)

 

一次発酵まで出来れば、あとはラジオを聞きながら、わくわく成型タイム。作る人のお楽しみです、後は任せた!

ここまで読んでくれた方は相当マニアックな人だと思います。お礼にアレンジ公開しますよ~

 

くるみパン生地のアレンジ

  • ノアレザン(+ラム酒漬けレーズン)
  • ノアレザン生地にクリームチーズ包あん
  • ナッツとチーズのハードパン(+ダイスチーズ、アーモンドホール)
  • パンオフィグ(+赤ワインとスパイス漬けイチジク、レーズン、カシューナッツ、オレンジピール)
  • りんごとナッツのパン(+りんごプレザーブ、ラムレーズン、カシューナッツ)

「ロジカル・レシピ(前編)」

いわなみ家の話

第104話

「ロジカル・レシピ(前編)」

「なせここを鍛えるのか、なぜこのフォームなのか」

目的に合ったフォームや回数をロジカル(論理的)に考えて筋力トレーニングすべきだと説く「ロジカル筋トレ(清水忍著)」が、とってもおもしろかった。

この本を読んだ翌日から、毎朝の筋トレが面白いと言ったら!

「なぜクルミを水につけるのか、なぜ砂糖を加えるのか、なぜこねずにパンチをいれるのか」

以下に、いわなみ家の「くるみパン」レシピを公開し、ロジカルパン作りをお勧めします。

レシピって、分量や材料名よりも、(カッコ)内や、下準備のほうが大事だと思っています。

明日からのパン作りがガゼンおもしろくなることまちがいなし!【なぜ】と【目的】を意識して工程を見ていきます。

材料

  • 強力粉 230g
  • ライ麦粉(粗びき)20g
  • 砂糖 12g
  • 塩 5g
  • 水 166g~
  • ルヴァン種(エキスと粉の比率が1:1.3のもの)70~80g
  • クルミ(しっかりローストしたものを水につける)50g

下準備

【なぜしっかりロースト?】クルミは150度のオーブンで30分程度、クルミの皮が濃い茶色になるくらいまでしっかり素焼き(ロースト)する。温度や時間はあくまで目安。機材によって違うので、目で確認する。

【目的】生クルミのえぐみやアクを飛ばすため。生地と一体化させたときに感じる、香ばしさと歯ざわりの良さのため

【きっかけ】あこがれのパン屋さんで順番待ちをしていたとき、その場所は換気口の真下。「ボヤ?焦げすぎちゃう?」くらいの匂いがダイレクトに頭上にふりかかって…。ガラス窓から工房をのぞいてみると、焦げ茶色にローストされたクルミがオーブンから取り出されているところだった。「なる!あのくらいやっていいんだ!」の翌日、家に帰って実践してみると、香ばしさと旨味、倍増。

【なぜクルミを水につける?】せっかくローストして乾燥させたクルミをまた水につけるのはなぜ?生地にクルミを練り込んで発酵させるとき、ローストしたままのクルミだと、生地の水分を吸ってしまうから。ぬるま湯に10分以上つけたもの(皮の周りのゴミも取れる)を使う

【目的】生地のプルプル感(水分量)を保ったまま、クルミを練りこみ、生地とクルミを一体化させるため。クルミの油分を生地に染み出しやすくして、生地をさらにプルプルにするため

…と、クルミの下準備だけでこんなに(笑)

もう出来たも同然です。

【なぜ砂糖を12g(全粉量250gに対し)】ハード系のパンには普通(普通ってなんや!笑)、砂糖を入れません。ですが入れます。

【目的】①天然酵母が発酵中に食べる用 ②焼き色をちゃんとつける用 ③保湿用 以上3つの用途のため

①天然酵母の発酵は一次発酵に平均8時間以上を要します。酵母はブドウ糖(砂糖や小麦粉に含まれる)を食べてガスを出し、パンを膨らませてくれます。天然酵母の発酵は長時間なので、エサ(砂糖)を切らさないように入れます。パンを甘くするためではありません

②発酵中に酵母によって糖が食べつくされてしまうと、最終段階の焼くときになって焼き色が付きません。焼き色の薄いパンはとても残念。そんなことにならないように砂糖を入れます

③ワタクシ、実は、飲むヒアルロン酸(サプリ)を始めました(ほんと)。パンもそうです、内側から保湿することも大事。砂糖はそのためです

…ウンチクだけで本文が終わってしまいました。

これがロジカル・レシピです。後編はいよいよ作り方です。

 

 

「カオス育児中の貴女へ」

いわなみ家の話

第103話

「カオス育児中の貴女へ」

遊園地で見かけた母子が忘れられない。

アスレチック広場のそばに設けられたベンチに母親は背中を丸めて座り、その隣には地べたに突っ伏して泣き叫ぶ男の子。みたところ2歳くらい。

母親は男の子を叱りつけることも、なだめることもせず、ただ顔を赤くして放心している。周りの目を気にすることもなく。

もう限界なんだろうと察した。

数分すると母親は男の子を抱き上げ、いよいよ一緒に泣いていた。

数年前の自分を見ているようで、つい声をかけそうになったが、あまりに不審だろうからやめておいた。

「子どもに手を上げそうになったとき、子どもへのイライラがピークに達したとき、限界だと感じたら。お母さん!一旦子どもから離れて別の場所へ」

とEテレでは言っていたけど…。

んなことできるわけねーじゃん、誰が見るのよ、その間、ねぇ?と、その母親に近寄って行きたかった。

この話の一部始終をママ友に教えたら、「うちも、夕方長男が泣き叫ぶから、勢い余ってつい怒鳴り付けてるところに、玄関チャイムが鳴って…。テーブルに足ぶつけて派手に転んで、床に座り込んだらこっちまで涙でてきたよ」。

カオス育児の真っ最中なんだよ。もう頑張らないで。あと数年したら、1人でコーヒーを飲めるから。

カオス育児から約6年。うちの娘はこの春から小3と小5。

遊園地の駐車料金は、帰り時に1000円を支払うシステム。

後部座席からニュッと長女の腕が伸びてきたと思ったら、その手のひらには150円。

「足しにして」ですって!

帰宅後すぐに簡単な夕飯を準備する夫。子どもも夫も年月をかけて、育つようです

 

 

「失敗から学ぶパン作り②ハード系のパン」

いわなみ家の話

第102話

「失敗から学ぶパン作り②ハード系のパン」

いきなりウンチクから始めます。

そもそも「ハード系のパン」って日本の変な言い方らしいです。ハード、固い系のパンって分かりやすいですけどね。

おフランスでは、バゲットやカンパーニュやパンドミなどは「パン」、クロワッサンやデニッシュなどバターや砂糖をたっぷり使った甘いパンは「ヴィエノワズリー」と分類されるから、いわなみ家のパンは全部「パン。」となります。

でも分かりやすいのがいちばん!今回は「ハード系のパン」の失敗や虎の巻をお送りします。

①準強力粉(フランスパン用粉)でなければハード系のパンは作れないのか?

【答え】いいえ。私は強力粉でカンパーニュを作っています。いわなみ家パンのハード系代表商品であるノアレザンやナッツとチーズのハードパン、パンオフィグも強力粉です。

あるとき準強力粉の発注を忘れました。業者の配達は明後日だし、ネットオーダーでも明日か…間に合わないな~と悩んだ末、山食に使っている強力粉で代用してみました。

違いは歴然(汗)

ふだんよりふんわり感120パーセント増のハードパンができましたが、悪くない焼き上がりでした。

失敗は成功の母。この失敗から改良を重ねて、今に至ります。

 

②強力粉でなければ食パンやロールパンは作れないのか?

【答え】いいえ。また発注忘れて(忘れすぎ!)、準強力粉(フランスパン用粉)で代用したことがありますが、ちゃんと焼けました。

①と②で、いつもの粉を変えたのに、なぜうまくいったのか。それは、こね方も変えたからです。

・ハード系のパンは、こねない。

・ふんわり系のパンは、こねる。

この基本を守れば、ハードもソフトもイケるのです。ハード系のパンは、「こね」ではなく、生地を折りたたむ「パンチ」で生地を繋げます。

 

ハード系のパンでも強力粉がおすすめの場合は以下のようなパンです。

・発酵のパワーが(イーストより)弱い天然酵母を使う場合

・具だくさんのハード系パン

・グルテンのない(少ない)ライ麦粉や全粒ふすまを使いたい場合

・小さいサイズ(生地量100グラム以下)のパン

パンは自由だ~絶対なんてない!なんてカッコいい言葉で締めようと思いましたが最後に

 

③準強力粉(フランスパン用粉)ならフランスパンが焼けるか

【答え】そんなに簡単に焼けませ~ん。あの(フランスパン用粉)の表示、やめて欲しいよね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗から学ぶパン作り①ベーグル」

いわなみ家の話

第101話

「失敗から学ぶパン作り①ベーグル」

ブログは100話に達しましたので、101話からは仕切り直して、本気のパン作り【失敗編】について綴ります。

年季のはいった失敗談が満載です。

スランプ中の人、どうも焼き上がりに納得いかない人、いわなみ家のベーグルみたいに焼きたい人、えーもうパン教室やらないのー?とボヤきたい人、そんな方々のために。

1. 焼き上がった生地が詰まりすぎている。食べると喉がかわく(笑)。苦行のように食べている。ボソボソする。

【答え】二次発酵不足。インスタントドライイーストを使用したベーグルの本には、「二次発酵不要」と記載されているものもありますが、自家製天然酵母では、成形したあとの二次発酵は十分に取る必要があります。

また、お湯で軽くゆでるときに、ベーグルが沈んだ場合も二次発酵不足です。1度茹でてしまった場合でも、緊急措置としてもう一度発酵器に戻すのもアリです。

 

2. 焼き上がりのベーグルに厚みがなく、平たい感じ。

【答え】あるよねー、わかる!塩入れ忘れてますね、それ。塩は生地を引き締める効果があるので、入れ忘れるとダレたパンが焼き上がります。

塩の入れ忘れ生地は焼き色もつきにくいので「あれ?オーブン追加しても追加しても焼き色つかないな…」って場合は疑ってみましょう。塩なしパンは悲惨です(経験者談)

 

3. 茹でるとベーグルのリングが外れる。水中分解。とじ目が開いてしまう。

【答え】成形中の休憩不足。ベーグルは分割して丸めて(休憩)、棒状にして(休憩)、リングにして(休憩)、と、大の休憩好きです。

ベーグル生地は他のパンに比べてとても水分が少ないので、簡単には緩んでくれません。無理して次の工程に進むと、緩んでいない生地が反発して(とじめが開いてくる、など)美しい形に仕上がりません。

生地にシナモン、ココア、抹茶パウダーなどをいれた場合は特に頻繁に休憩させてください。シナモンは手強いぞー。

水中分解したとじ目をいくら念じてくっつけ直してもダメなんですよね~

 

4. 茹でるときに生地がオーブンシートから離れない。引っ張ったら手についてしまって、も~ヤダ!

【答え】まず基本の基として、仕込みの水分はギリギリで!ベーグル生地は固くてOKです。

次に、オーブンシートが湿っていたり、汚れていたりすると、シートの上に乗せた生地がくっついてしまいます。

オーブンシートではなく、キャンパス布の上で発酵を取るのもオススメです。この場合は、茹でるときに打ち粉を指先に付けてササッと生地を持ち上げて移動させます。打ち粉を付けたスケッパーを生地の下に差し込んでも良いですね。

 

5. 焼き色がつきにくい

【答え】欲張って一度にたくさん焼いていませんか?ベーグルとベーグルの間に熱風の通り道を十分に確保しましょう。

焼き色をちゃんとつけるには「いつもよりマイナス2個」の個数のベーグルを1回で焼いてみましょう。

焼き時間を伸ばすわけではありません。時間を延ばせば延ばすほど、皮が厚く焼き上がってしまいます。

 

6. ベーグルの裏が香ばしく焼けない。焼き色がつかず生っぽい

【答え】これも経験あるぜぇ。対処法はふたつ。

1つ目は、茹でるとき。裏面はほんとにサッと、5秒くらいでOK。そのあと、オーブンシートに乗せるときもしっかり湯切りしてください(ラーメン屋ほどじゃなくていいよ)。ベーグルの穴のところに湯がたまってる場合もあるので穴もチェック。

2つ目は、これまた1度に焼く個数。たくさん焼くと、それだけ熱が伝わりにくくなります。いつもより1、2個減らして焼いてみてください。

 

7. 周りの人がベーグルの美味しさを分かってくれない

【答え】ゆゆしき事態です。すぐさまその人に100均のスプレーをプレゼントして、「オーブントースターで焼き直す前に、ベーグルを霧吹きでベショベショにしてくれ」と頼んでください。