「カオス育児中の貴女へ」

いわなみ家の話

第103話

「カオス育児中の貴女へ」

遊園地で見かけた母子が忘れられない。

アスレチック広場のそばに設けられたベンチに母親は背中を丸めて座り、その隣には地べたに突っ伏して泣き叫ぶ男の子。みたところ2歳くらい。

母親は男の子を叱りつけることも、なだめることもせず、ただ顔を赤くして放心している。周りの目を気にすることもなく。

もう限界なんだろうと察した。

数分すると母親は男の子を抱き上げ、いよいよ一緒に泣いていた。

数年前の自分を見ているようで、つい声をかけそうになったが、あまりに不審だろうからやめておいた。

「子どもに手を上げそうになったとき、子どもへのイライラがピークに達したとき、限界だと感じたら。お母さん!一旦子どもから離れて別の場所へ」

とEテレでは言っていたけど…。

んなことできるわけねーじゃん、誰が見るのよ、その間、ねぇ?と、その母親に近寄って行きたかった。

この話の一部始終をママ友に教えたら、「うちも、夕方長男が泣き叫ぶから、勢い余ってつい怒鳴り付けてるところに、玄関チャイムが鳴って…。テーブルに足ぶつけて派手に転んで、床に座り込んだらこっちまで涙でてきたよ」。

カオス育児の真っ最中なんだよ。もう頑張らないで。あと数年したら、1人でコーヒーを飲めるから。

カオス育児から約6年。うちの娘はこの春から小3と小5。

遊園地の駐車料金は、帰り時に1000円を支払うシステム。

後部座席からニュッと長女の腕が伸びてきたと思ったら、その手のひらには150円。

「足しにして」ですって!

帰宅後すぐに簡単な夕飯を準備する夫。子どもも夫も年月をかけて、育つようです