「助け船はどのくらい」

いわなみ家の話

第113話

「お客様にお知らせします。福岡行き1234便は大雪のため欠航いたします」

去年の正月、新潟空港で痛い目に遭ったので今年は夏休みに帰省してきました。母子3人で往復9万円超。夏でも冬でもチケット代は痛い!

小5の娘が会津若松市から福岡市の距離をインターネットで調べて「1200キロの旅」と題して作文を書くと言うので、助け船を出しているところです。

さてどのくらい助けようか…。

先日、娘たちの書道教室を見学しに行ったところ、おどろきの母子を見ました。

お母さんは教室に着くやいなや、筆を並べ、下敷きに半紙と文鎮をセットし、硯(すずり)に墨汁を注ぎます。書くのは、お母さん?ではなく、その娘。

「○○ちゃん、筆の入りはここからね。右上がりにグーッと、そうそう」

書道では、文字を書いたら墨汁が半紙ににじまないように、別の半紙で拭き取る作業も出来栄えのうち。

娘、一画書く。母、拭き取る。

母娘はまるで、餅つきの呼吸。あまりにスピーディーな一連の動きに、杵と臼が見えそうでありました!

母娘に見とれている間、うちの小3はというと。墨汁のにじみを拭き取ろうとしたはずみで筆をスカートの上に落とし、アッ!筆は半紙に着地…。半泣きでこっちを見ています。

小5は、私よりはるかに上手いので、母の助言はかえってマイナスでしょう。見学に徹しました。

助け船をどこまで出すべきか、子育てに日々迷います。

夏休みもあと2日。「1200キロの旅」は、ほぼ母の誘導尋問にて完成しました、笑。

このブログの書き出し、実は作文の書き出しと同じです。

母「飛行機が下がってきたら?」

娘「えっとねー、お腹の中がぐちゃぐちゃになる感じした!」

母「あー、そうね。それで?窓から景色とか見た?」

娘「飛行機の羽でよく見えなかったしー」

母「海とか見えたでしょーにー」

こうした誘導尋問で出来た一文は、「飛行機が高度を下げ、窓から景色を見下ろすと、つばさの向こうに博多湾が見えました」となりました。ちょっと誘導が強引だったか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夏の自由研究」

いわなみ家の話

第112話

「夏の自由研究」

連日の37度。小学生×2が家に居るだけで室温アップなんですけど…。

「マぁマー!自由研究なにすればいーのー?!」

「自分で考えなさい!」

と言い放ったものの、パン屋店主には超オススメの題材があるんです。

「果物を発酵させてパンを焼こう!」

え、却下?ガーン。手取り足取り指導できるのになー。いわなみ家生徒さんなら喜んで集まってくれるのに、うちのスタッフは見向きもしてくれません。

娘らの冷たい対応にめげず、この夏わたしは「水キムチ」に挑戦しています。

米の磨ぎ汁と野菜を発酵させて作る、辛くないキムチ。夏野菜の消費にも良いうえに、乳酸菌が糠漬けの16倍!

本の作り方によると「磨ぎ汁に野菜を入れて半日ほど室温に置くと、シュワシュワと泡が出て発酵する」と書いてあります。

日ごろ、パン生地を体感でコントロールできている私は漬け物となると及び腰。「大丈夫なの?腐ってんじゃねーの?」のドキドキ。実験は続きます。

さて、小5の自由研究が決まったようです。「塩の結晶づくり」か、いーねいーねー!

「食塩水から塩の結晶ができた!しょっぱい粉末のほうが結晶ができやすいかも。次はコショウでやってみたい。焼きそばソースのパウダーもいいかも」

子供の想像無限大。

コショウの結晶、マルちゃんソース焼きそばの結晶、できるかな~。母はスポンサーとして材料の提供にいそしみます。

 

 

「疲労対効果」

いわなみ家の話

第111話

「疲労対効果」

 

少ない費用で高い効果を得ること、すなわち費用対効果(コスパ)が良いことは、歓迎されますね。

コスパの良いお徳用タオル、コスパの良いドリップコーヒーセット、コスパの良いハイブリッド自動車…。

商売においては、費用対効果と同じくらい、いやそれ以上に、「疲労対効果」が大切なのではと身に染みて感じています。

少ない疲労で高い売上を生むには…?

例えば、めちゃくちゃ気合いをいれて200個のパンを焼いてイベントで完売させても、翌日以降の疲れはなかなか抜けないもの。

対して、製造数を100個に抑えて翌日の疲労をゼロにすれば、翌日もまた元気に100個分の生地を仕込むことさえできる。

パン1個300円として、200個で売上6万円。オマケに疲労がどのくらい残るか否か。疲労を残したまま次の仕事に移ると、思わぬ失敗(塩入れ忘れ)をしたり、感覚が鈍ったり(発酵見極めミス)して、結果、売上を落とすことになります。

その日の天気や体調によっても、疲労は多めにやって来たりするのでいつも一定とはいきません。

それならば、今の自分の疲労を(なんとなく)数値化してみようと思いました。

疲労度数MAXを10として、「このくらいの仕事量なら、明日は疲労度数6~7がくるな」「8以上だと翌日きついはず、仕事量をセーブしよう」という具合に。

疲労度数を翌日ゼロにするのが最も理想的です。

日中の昼寝で疲労度、-1。

湯船に浸かって、-1。

適量のワインで、-1。

早めの就寝で、-2。

ここ半年ほどはストレッチと筋トレに励んでいるので、それらも効いているかもしれません。疲れにくくなり、疲れが取れやすくなりました。

筋力アップは売上アップに通じる確信が持ててきました。(なかやまきんに君をインスタグラムでフォロー、笑)

日々の蓄積疲労が解消されないほど溜まってきたら思いきって店休を取ります。

そうそう、疲労度数を減らすのに効果的なものが、好きなものをネットショッピング。疲労度数、-1ないし2。

あ…ポチったら売上減りましたかね?

また働くべし!

 

「梅雨の手持ち無沙汰」

いわなみ家の話

第110話

「梅雨の手持ち無沙汰」

梅雨入りして湿度も気温もぐんぐん上昇すると、お客さんがパッタリと減る。お弁当屋さんをしている親友Tちゃんも同じことを言っていた。

毎年のこととはいえ、気持ちが沈んでしまう。

「お客さんたち、私のパンに飽きてしまったの…。もしかしてネット上で変な評判が立っているのかも…」。

売れ残ったパンを前にして、徹夜の疲労が2倍増しに。そんな日の昼ご飯にコンビニの冷やし中華を選んだ。「こっちも弁当苦戦中」とLINEを送ってきたTちゃんは、休憩中にフローズンヨーグルトを食べていた。

あ、そういうことね~。やっぱり梅雨のせいらしい。

翌週はパンの生産量をいつもの6割(90個)に減らしてみた。

いつもは深夜1時から翌朝7時までノンストップでパンを焼いてるが、生産量減で手持ち無沙汰になり、2度もコーヒー休憩をして、Tverで見るドラマもなくなってしまった。

思いがけず時間にゆとりができた、梅雨の晴れ間の週末。

パン屋が昼寝をしている間、父子は、NITORI&KOMERIに出かけていた(オシャレなカフェではありません、笑)。ニトリでは回転式の学習椅子を購入。また、コメリで調達した木の板で、DIYの学習机が二日で完成していた。

この古民家に移住して以来、ずっと物置部屋になっていた一室が、ものの2日で子供部屋に。急激な変化は他にも続いた。

すっかりプライベートスペースが気に入った姉妹は、ふすまを締め切って、さっそく宿題に取り掛かった。「入るときノックしてねー」とな。突然訪れた静かな時間。

「え、待って。これが親離れ?」

あれだけ一人の時間にあこがれていたくせに、居間に姉妹ケンカの声がしないと妙な気持ちになった。パン作りも忙しくない、「ママー、見てってばー」のしつこい見て見てアピールもない。あっちもこっちも手持ち無沙汰。

(お母さん、もしや、寂しいんですか)と、ふと聞こえる天の声。(いやいやいや、んなわけないでしょ)と、反論し、いつもより丁寧に洗濯物を畳んだ。

「ママー、見て~」。

ハイなんでしょう?と新鮮な気持ちで振り返ると、ちっちゃなジップロックに油性ペンで「グラノーラ」と書かれた粘土のカス?をもらった。「えへへー、これ作ってたの」と小3次女。

アーモンドスライスも、カシューナッツも入った、いわなみ家のグラノーラ。勉強してたんちゃうんかい

 

「テントさえあれば」

いわなみ家の話

第109話

「テントさえあれば」

 

パン屋の屋根が破れて雨漏りがするかと思えば、ついには柱が抜けてしまいました。

でも大丈夫!ポチっとすれば翌日には新しいの届くんで。キャンプ用のタープテント(2.5×2.5m)が、いわなみ家の要です。

5年前、ここ会津美里町(旧高田町)へ移住することが決まったと同時に、高田のメインストリート(!)にある商店街で、空き店舗を探してはみました。

役場の方から教えてもらったのは、地方銀行の支店跡地や、元日用品店など。

昭和レトロな外観の物件もあり、心ひかれましたが、「やっぱまだいっか…」と即決はできずにいました。

当時、下の娘は幼稚園児。寝床からこっそり抜け出してパン作りをしようにも、かなりの確率で目を覚ましてくれました。アタシの姿が見えなければ「ママァァ~!」と手のつけようがなくなりました(今は布団を引っ剥がしても起きない、笑)。

自宅から車で10分のところに店舗を構えたとしても、深夜に出勤するのは無理だろうと判断し、「店舗兼住宅」の今に至ります。

住宅の一部を店舗に改装するほどの資金もなく、タープテントが店。晴れた日は庭にタープを広げて、または縁側で。雨の日は玄関前で、夫がクルマで出かけたら「しめしめ」と、夫のガレージで。

開業から3年たった今、このフリースタイルが板について気に入っていて、ずっとこのままでいこうかと思っています。

毎週2回、3年ほど使い倒したタープテント。店舗家賃が12000円(4000円/年)と思えばもうけもんです。