「残金35円の旅」

いわなみ家の話

第134話

「残金35円の旅」

町の企画で、栃木県への小学生バスツアーが開催された。小学4年以上は保護者の同伴なしでもOKとのことで、次女の希望もあり、「いっておいで~」と早朝に送り出した。

参加費と小遣いを持たせて。

行動予定表を見ながら、

「もう到着したころかな」「お昼かな」「自由時間はじまったかな」。クールに見送ったはずなのに、ママやっぱり心配。

予定表どおり、18時過ぎに、ニコニコ顔で帰宅。背中になにか、レジ袋を隠しながら…

「35円しか余らなかった!」

レジ袋には「とちあいか イチゴチョコ大福(18コ入り)」が入っており、背中のリュックには見慣れないキーホルダーも。「これとこれ買ったの~」。

言われもしないのに、レシートと残金も提出。ナデナデ。

そーかいそーかい。楽しかったのね~。

ひととおり土産話を聞いたころ、

「AちゃんもBちゃんもCちゃんもDくんも、こーんなおっきい、ふわふわの、3000円のぬいぐるみ買ってた」との報告。

「えぇ?みんな、おこづかい幾らくらいもってきてたの?」

「1万円とか」

「はん?イチマンエン?」

ち、違いすぎる。家庭の金銭感覚はどこも違うものだが…。

ぬいぐるみを抱き抱えてレジに並ぶ級友を横目に、残金わずかの彼女の心中は…。胸が締め付けられそうになった。

「かえちゃん、みんなが買ってたとき、寂しい気持ちになった?」

「うん、ちょっとなったけど…ずっとは(そのぬいぐるみを)かわいがれないと思って、いいやと思った」

ここに、ひっそり我が子を表彰します。

「そっか、ちゃんと考えたんだね。家族で行ってたとしても、ママは買ってあげないと思うよ。わかるよね?」

「うん、わかる」

続いて、二度目の受賞です(笑)

このやりとりを聞いていた本日留守番の姉(小6)が一言。

「うちはうち、よそはよそ!」

おい!君はどこのオバサンか~

そのフレーズどこで覚えたん?あ…このオバサンか。

イチゴチョコ大福がやけにあまずっぱく感じる夕べでした。