「笑顔の妄想」

いわなみ家の話

第62話

「笑顔の妄想」

あーー。また見出しになっちゃいました。

パン屋になって以来、ありがたいことに新聞や雑誌社から取材を受けることが何度かあります。

その度に、いわなみ家と私自身を知ってくれる人が増えて嬉しい限り。どの記者さんも丁寧に取材してくれます。

ですがね、わたしこれまで1度もインタビュアーに「笑顔にしたい」と言ったことはないんです。よく記事になるのですが。

パンと笑顔の一人歩き状態…。

今これを読んでくれているみなさんから

「なに言ってるの。いつも美味しいパンありがとう!笑顔になってるよ~」

って声、届きそう。うんうん、それはしっかり受け止めた!サンキュ。

でも、パンで笑顔にしたいだなんて、そんな大それたこと、わたしはよう言いまへん。

ただ、「これ、おいしいですから」と自ら太鼓判押せる商品を買ってもらって、みなさんのお腹を満たしたい。

パンを前にして、

笑顔になるか、ワッと我慢してた涙が出るか、丁寧にコーヒー淹れてみる気持ちになるか、今夜はパスタにしようと準備するか。はたまた、子供に隠れて夜中に食べるか、ラップして冷凍庫にしまっておくか。

それはみなさん次第。

パンを買ってくれた、その先の妄想をするのが店主の楽しみ。

…こう話せばよかったかな。元新聞記者を取材するって、面倒くさいですよね。ごめんねー、これまで取材してくれた数々の記者さん。

言葉を発するのも書いて伝えるのも、面白くて難しいネ~