いわなみ家の話
第58話
「No copy のおまじない」
長らくパン教室を休止していますが、先日、元生徒さんから「レシピを売ってください」と連絡をもらいました。
数年前のインスタグラム投稿を見つけた彼女。投稿写真は、ファイルに無数のインデックス(見出しシール)が貼られているもの。
もし、地震や火災が起きて真っ先に持って逃げるもののひとつが、この「いわなみ家レシピ(原本)ファイル」です。ふたりの娘を小脇に抱えて避難してもなお、このレシピファイルは離さないと思います。
大袈裟かもしれないけど、これがなければいわなみ家廃業です。
数えると原本ファイルには、51のレシピがありました。1つのレシピに3ヶ月かかるものもあれば4年たっても上書きアップデートしているものもあります。
インデックスに書かれたパンの名前は「カンパーニュ、くるみパン、ライ麦ツイスト…」。リクエストにお応えして、たくさんのレシピをコンビニでコピーし、有料(1レシピ600円)でお送りしました。お支払いに感謝します。
おうち時間のパン作りに、手書きレシピがヤル気のサポートになれれば幸いです。質問があったら連絡くださいねー。
ところで。
コンビニ10円コピーしたB4サイズの紙1枚が、600円?
と、捉えていた方が、残念ながら、以前、2名ほどいらっしゃいました。
6年ほど前、自宅パン教室に「小さなカフェをやってます」という女性が来ました。
「初めての方は、ベーグルかカンパーニュを習って基本をおさえるのがおすすめです」と伝えましたが「いや、ノアレザン(くるみとレーズン)で!」とのこと。
それならばと、熱意に負けてレッスンしました。
でも、なんだか変な感じだったな…と、数日後、そのカフェのブログをのぞいてみると、「ノアレザンと温かい飲み物のセット」なるメニューが新登場していました。
こちらも、あちらも、お客さまからお金をいただく商売人です。なぜ、あっけらかんと、そんなことができるのか理解に苦しみました。
案の定、彼女がレッスンに来たのはそれきりでしたが。(好きにやってくださ~い)。
もう1人、衝撃的な記憶としては、お友達同士でレッスンに来た帰り、「今日もらったレシピ、コピーする?」と他メンバーに提案した人がいたらしい。
打診された他メンバーのひとりが「ありえない!」と憤慨して私に通報してくれたのです。(あのときは、サンキュー)。
それ以来、ニヒルな顔をしたコケシが「No copy!」と主張しているスタンプを、朱肉でレシピに押すようになりました。あれ、わたしの血が滲んでるかもよ~イヒヒ。
効果はおまじない程度かと思います。
でも、最近では「分かってくれる人がいればいいさ~」の境地。
1回きりのお付き合いはご縁がなかった証拠。何十人と1回ずつ、より、数人と何十回お付き合いできるほうが、豊か。わたしも大人になったでしょう?店主さとちゃん、さとっちゃってるー?!