いわなみ家の話
第96話
「隔離?だめだこりゃ」
39度の熱を出して、医療機関の抗原検査で「陽性」の判定をもらった我が家の妖精、いや、陽性第1号の娘。
弱っている子供を一人残して隔離するなんて、と胸が張り裂ける思いで別々の部屋で就寝することにした。
その翌朝、
「ママー。おでこさわってー!熱、なーい!」
と元気に私の布団にもぐりこんできた。
だめだこりゃ…。
2日後、順当に発熱した妹も、深夜2時に私の枕元にヌボーッと現れて、
「ママといっしょに寝るー」。
そうなるわな~。
初日こそ妖精ちゃんの使った寝具やソファーを除菌スプレーしたり、トイレの後にくっついて回って掃除していたが、「コレ、意味あるんかな」と思えてきた。
近所に住む感染経験者ファミリーは二世帯で、
幼稚園児の次男が感染したと当時に、「長男と祖父母」「次男と父母」のチームに分かれ、家庭内でLINEの連絡を取り合って食事や入浴時の順番を決め、見事「長男と祖父母」チームは感染を免れたらしい。相当徹底したのだろう。
核家族の家庭内隔離はヒジョーに厳しい。
親が目を離した隙に姉妹はくっつきあって遊んでいる。オーノー!
また、風呂は、症状のない者から順に入っていたが、脱衣所で母が素っ裸になっている時に限って姉妹が乱入してきて、「お風呂ひとりはヤダー」「お姉ちゃんだけずるい」「そっちだって」とケンカが始まる始末。
「あーもう!ゴチャゴチャ言うならみんなで入ろう」。
可愛さと、面倒くささと、人手の無さがあいまって、隔離政策は頓挫してしまった。
ほかの経験者はこうも言っていた。
「隔離なんて端から難しいと思って、(症状が軽いなら)家族ができるだけ心地よく過ごすかです」。まったく同感だ