「1枚のホットカーペット」

いわなみ家の話

第95話

「1枚のホットカーペット」

 

コロナ家庭内療養3日目。

1枚のホットカーペットに集まる家族団らんの図。

「1ペア」「ストレート!」

解熱し、暇をもて余した子どもたちとパパが、マスクをして向かい合い、ポーカーをしている。(「隔離生活あきらめました」執筆中 )

コロナは、かすがい。

夫婦の会話なんてロクになかった我々夫婦も、この状況では互いに助け合わなければならなかった。

病院の予約や受診、学校への届け出、スーパーへ買い出し…。それぞれ抱え込んだ仕事をキャンセルしながら、今は目の前の緊急事態に対応していく。

見事なバトン方式で子ども達が発熱していく中、

元気なほうが元気なうちに、手が空いたほうが動き、(会話も増え)、理想的な夫婦の形に近づいていた。

 

「2ペア」「フルハウス!」

明るい親子3人の声が布団のなかに入ってくる。

こんな団らん、いつぶりだろう…。

私はというと、午後から微熱が出て、ホットカーペットの隅っこで寝込んでいた。

 

「ポーカー、もいっかい!」

「そろそろ7時だ。ご飯にしよっか」

「そだね。ママ~ご飯にしよ!」

 

「はぁ?ご飯つくってないけど?ママ寝てるの見えなかった?」

 

ポーカーのメンバーに激震が走る。

長女はそそくさと箸を並べ、パパは無言で塩鮭を焼きに台所へ向かう。

いわなみ家他メンバーに告ぐ。

ママはサイボーグでもご飯係でもない!

(母は半日で平熱に…。ちぇっ。しばらく熱あるってことにしとこう)