いわなみ家の話
第78話
「5月のぴーちゃん」
今年も我が家にピーちゃんがやってきました。
かやぶき古民家の屋根には、囲炉裏の煙を出すための、さらに小さな屋根がついています。
そこは、別名・スズメのおうち。
今年も生まれたてのヒナが屋根から落っこちてしまいました。
学級閉鎖で自宅待機の長女が、朝、軒先で見つけました。
「去年はアマゾンさんが届く前にぴーちゃん死んじゃったからね・・」
翌日お急ぎ便で注文した「小鳥のエサ」を待たずに死んでしまった先代(去年)のぴーちゃんを思い出します。
親鳥から離れてしまった今年のぴーちゃんも長くは生きられないと、彼女は知っています。
それでも、あの手この手でぴーちゃんのお世話です。
お向かいのおじちゃんが持ってきてくれた稲わらを敷いて、ぴーちゃんを温め、去年使わなかった小鳥のエサを与え、スポイトで水を飲ませ…。
「おかあさーん、ぴーちゃんはここですよー」
と電線に止まったスズメに声をかけてもみました(あれきっとお母さんスズメだよ、とのこと)。
けれど、お別れのときは予想より早く、昼過ぎにはやってきました。
最期の1時間は、身悶えするように身体をよじらせたり、羽をばたつかせたり。かと思えば、目を閉じ、微かに肩で息をして。
それを間近に見ていた長女が、
「苦しませずに死なせてあげたい」
とつぶやきました。
さらに見守ること数10分後、柔らかな羽毛の動きがついに止んだときには、
「よかったー、これでいい夢がみられるねー」と。
愛おしいものの命が目の前で終わろうとするときの、心からの言葉が聞けた気がしました。
開かなくなったクチバシに何も言わずに水を含ませてやる姿も、覚えておきたい子育ての1ページになりました