「値上げの基準」

いわなみ家の話

第68話

「値上げの基準」

朝、食パン1枚(約2.5センチ幅スライス)をトーストして眺めてみる。

香ばしくツヤのある薄皮(クラスト)、しっとりした中身(クラム)。

このクラムとクラストのバランスは、自分のパンで最もこだわっている点のひとつ。

「自分ならこれに幾ら出せるか」

「1枚100円出してでも、また食べたいか」

スーパーに並んでいる6枚切りの食パンが1袋170円だとして、1枚28円。

いわなみ家の山食は1袋(1/2斤)でだいたい4枚取れます。

ここではじめて、1袋400円(現行300円)でいこう、と腹をくくります。

 

いわなみ家のパン原材料は、多い順に

  • 小麦粉
  • ドライフルーツ類(主にレーズン、クランベリー)
  • ライ麦粉
  • ナッツ類(くるみ、アーモンド)

昨年1年間で、すべて値上がりしました。

外国産小麦については、報道の通り、政府売渡価格が半年前に19パーセント、さらに春から17.3パーセントの値上げ。

100円の小麦粉が1年で約140円になった計算です。

確かに、痛い。毎月の支払いが、めっちゃ痛い!激痛です(笑)

だけど、わたしの「値上げの基準」はもうひとつ大事な要素があります。

「このパン、幾らまでなら自分でもお金を出せるか」。

いわなみ家のパンを、最もお金を出して買う立場にない自分だからこそ、シビアに想像してみます。

(プライスカードを書くとき、実は原価計算などしたことがありません。いつも直感です)

そのポリシーは2年半前の開業当初からブレていません。

そして、絶えずパン作りをしていた結果、徐々に腕が上がってきました。パン生地と呼吸を合わせるように、パンが焼けるようになってきました。

今の力量でパンを焼いて、値段をつけていきます。どうぞご理解ください。

2022年春(店頭販売)より値上げします。