いわなみ家の話
第14話
「移住の決め手」
ここ、福島県会津美里町に移住して3年目になります。
「赤留(あかる)」「雀林(すずめばやし)」「尾岐(おまた)」など、地名もすんなりリスニングできるようになってきました。いまだに「布才地」が読めない・・。
時は遡って、3年前の夏休み。
毎週のように、当時住んでいた福島市の借家から、片道2時間山越えして会津地方へ通っていました。
1日に、多くて2~3市町村。目指すは役場の移住促進課。
奥会津三島町、南会津町、西会津町、喜多方市、会津坂下町、会津若松市、磐梯町、猪苗代町、柳津町、北塩原村。
「海に行きたい!」という子供たちを、猪苗代湖で湖水浴させて、どこへも遊びに連れていけない夏休みを取り繕っていました。
「ここ、海~?」だって(笑)。
子供は純粋やのぉ。こんな親を許せ~!
夫の実家は長野県は諏訪市にあり、実家の裏を流れる川の土手からは、八ヶ岳が望めます。
まるで、映画「おくりびと」のワンシーンのよう。
主役で納棺師役の本木雅弘さんが、残雪の山をバックに土手でチェロを弾くシーンです。あれは山形県で撮影されたそうですが。
「日本の原風景」。
移住地の条件として、そんな土地を探していたのは我々夫婦の一致する考えでした。
長野県松本市、塩尻市、原村、茅野市、富士見町、安曇野市、東御市、小諸市、立科町。
帰省のついでに、長野県の市町村も巡りました。
そして夏の終わりには、大量の移住パンフレットを前にして、役場巡りに疲れはててしまいました。
やみくもに調べたけれど、自分たちは一体、何を基準に移住地を選べばいいのか。
長女が小学校にあがるまでには移住したい、と目標を掲げていましたが、何の収穫もないまま、季節は秋。
幼稚園では卒園の準備が・・。入学予定の小学校は?と聞かれても・・。借家の更新は・・。
「もいっかい会津いってみよっか」
通いなれた土湯峠をまた越えて、今度は会津美里町の「移住定住促進課(現在は人口減少対策課)」をたずねました。
窓口からバタバタと笑顔で現れたのは、長谷川さんと長谷川さんと長谷川さんと関本さん。
今思えばこのメンバーが移住の決め手のひとつです。
たくさんの市町村をたずねましたが、人気の移住地であればあるほど、窓口の対応はそっけないものです。
「はい、こちらが資料です」。以上。
移住雑誌に載っているような土地には、役場が黙っていても移住希望者が集まってきますからね。
それにひきかえ、会津美里町の積極的なこと!
会ったその日に「それじゃ、これから車出しますんで、町をドライブしてみませんか?」。グイグイきました。
後で聞いた話ですが、ドライブの翌日から、3人の長谷川さんは、「岩波一家に必ず移住してもらおう・・」と作戦会議をしていたんだそうです。