「会津のフランス化」

いわなみ家の話

第120話

「会津のフランス化」

東京でパティシエ(ール)をしていた女性が、会津に戻って、旦那さんが経営する居酒屋で洋菓子店を開いたという。

赤ちょうちんに木枠の引き戸。THE居酒屋!という佇まいに、余計に心躍らせて入店。日本酒や梅酒のボトルが並ぶ店内を、お客さんがぐるりときれいな円の列を作って待っている。その先のショーケースには、ズラリと並んだケーキ。和栗のモンブランタルト、プリンアラモード、メロンシャンティ、ムラングシャンティ。

ここ、ほんとに会津ですか?東京ですか、(行ったことないけど)パリですか?

シャンティとは、泡立てた生クリームのこと。菓子学校で修行していた別の友人は、すっかりフランスにかぶれてしまって、ホイップクリームを「クレーム・シャンティイ」、カスタードクリームを「クレーム・パティシエール」と言っていたなぁ、と遠い昔を思い出し、長い列に私も加わりました。

ちょっとこの辺ではお目にかかれないレベルの洋菓子にすっかり興奮し、家族用に買った紅玉のアップルパイを車内で食べてしまいました。

後日、店主に伺うと、「このレベルのケーキが会津で買えるとは…」と、お客様からお褒めの言葉をいただいたことがあるそうです。

実はわたしも何度かあります。「この田舎で買えるとは!」と。ハイ、確かにここは田舎です(笑)フランスには行ったことがないので大変恐縮ですが、開業当時からフランス語の名前のパンを売っています。

「パン・ド・カンパーニュ(田舎パン)」

この田舎にぴったりのパンは、1年目も2年目も、売れ残り第1位のパンでした。

「このパンしかないの?…残念。でも、せっかくだからいただくわ」のパンでした。

毎週焼きました。毎週残りました。

でも3年目ころから、真っ先にカンパーニュを掴みとるお客様が現れました。そして、カンパーニュから先に完売する日も!

フランス暮らしの経験がある友だちいわく、「ついに来たね~、会津のフランス化!」

今日は明日の営業に向けて、ご注文カンパーニュ12玉焼いています。