「頭のなかのコツ」

いわなみ家の話

第115話

「頭のなかのコツ」

40年くらい前の話。

仙台育ちのわたしの友人が、新婚1年目、彼の実家で食べた「ソースカツ丼」のおいしさに感動したそうです。「会津にはこんなに美味しいものがあるのかぁ」と。

彼の実家は、会津若松の七日町通りに店を構える食堂「丸重」。彼のお父さんがお嫁さんに、自慢のソースカツ丼を振る舞ってくれたんですね。ええ話や。

そのお父さん、ある日の朝、出前の食器を回収しに出掛けたところ、信号無視のバイクに突進されて重傷を負い、意識が戻らないまま事故から数年後に亡くなりました。

お父さんの頭のなかだけに存在していたソースの配合も、ラーメンのだしの取り方も、ポークソテーのコツも、誰にも受け継がれることはなく、1992年、地元に惜しまれながら店を閉じることになったそうです。

創業20年の丸重には遠く及びませんが、創業4年のいわなみ家。頭のなかにだけあるパンのコツ…実はわたしにもたくさんあります。

と!思い立ち、役場の調理室でパン教室を再開しようかなと考えています。

いわなみ家で売っているものと同じパンを作ります。

初心者でもパン経験者でも、生徒さんの今後の暮らしに、きっと為になる内容にする予定です。

詳細はのちほど。