「第3駐車場のじいちゃん」

いわなみ家の話

第93話

「第3駐車場のじいちゃん」

 

第3駐車場のじいちゃんが亡くなった。

「空いてっから使え」

と、自宅前の広いスペースを、いわなみ家お客様第3駐車場として貸してくれた「金子のじいちゃん」。

じいちゃんはその昔、宮大工だったそうで、自宅も作ったそうだ。自宅裏の畑には、じいちゃんお手製の鳥の巣箱も。

私たちがじいちゃんちの道路向かいに引っ越し、自分達でリフォームしながら住み始めた頃、よく顔を見せてくれたものだった。

夫がDIYする電動のこぎりの音が聞こえると、ひょっこり現れ、大工の血がさわぐのだろうか、アドバイスをしてくれているようだった。

(実はじいちゃんが言っていることの半分も聞き取れていなかったのだけど、「うん、そうだね」と、いつも調子を合わせておいた)

金「おめら、とーちょーからかぃ?」

夫「とーちょー?」

金「んだからよぉ、とーちょーかよ?」

とーちょー、が東京だと分かったのは、半年ほど後のこと。

 

今日は金子のじいちゃんち、慌ただしく旅立ちの準備をしてるようだった。

「知らない子供がけっこういっぱい来てるよ」と、庭に出ていた長女が教えてくれた。

ここに住んでもうじき4年になるが、確かに初めて見かける親戚の子たちだ。

「もっと早く来てればじいちゃんに会えたのに…」と含蓄のある言葉をつぶやく長女。

事情はわからないし、なにかと家族は忙しい。けれど、会えるうちに会っておこうと思った三日月の夜。

夕方、お別れしてきました。

きれいで穏やかなお顔でした。

じいちゃんゆっくり休んでね。