「ヘビとアブとマムシ」

いわなみ家の話

第29話

「ヘビとアブとマムシ」

縁側でパン屋をしているなんて、日本全国あたしんちくらいでしょうけど、まー出ます。虫たちが。

先日の開店時間には、縁側をブンブンいわせて飛び回る虫に、ちびスタッフたちは怯えまくり。

意気込んでいたレジのお手伝いどころじゃありません。

「ママぁ~、ハチくるー、やだ、くるー!」

「やだー、お母さんもやだー」

頼りない店主に見かねて?

「アブだ、アブ」と冷静に判断した常連客の男性、W部さん、そばにあったパン用のかごを構え、壁に止まったアブに狙いを定めてバシッ!!

コロンと、息絶えたアブがひっくりかえりました。

ほかのお客様から、スーパーマンに拍手が送られました。あたしなんて目がハートになりそうでした。

ほっとしてレジを進めていたら、今度は向こうのお客様の列から悲鳴のような声が。みなさんモクレンの木を見上げている様子。

「あれ、ほら、きれいに絡まってる」

「落ちてこないといいけどー」

すぐそばの木陰でヘビが休んでいるらしいのです。

日曜と火曜はお客様いっぱい来るんだからそんなとこで絡まってちゃだめだよー、ヘビくん。

 

そういえば、去年の今頃は、縁側にすわってお店を始めようとしたわたしのすぐ背後に、マムシ!!

窓と網戸の間に挟まって「彼」も困っていたみたいでしたが、何をどうしてよいかわからない私はアタフタするばかり。

そうこうしているうちに、近所の常連K島さんが自宅に戻ってバーベキュー用のトングを持ってきてくれました。

「それ貸してください!」

と名乗り出たのは、列に並んでいた若いお父さん。

網戸越しに少し刺激を与え、マムシが出てきたところをトングで挟んで捕獲したかと思うと、お客さんの列から遠く離れたところまで持っていって、ガンッ、ガンッ。

庭に転がっていた大きめの石を使って、マムシを駆除してくれました。

毎年スーパーマンが現れて助けてくれますので、どうぞみなさん、安心してお店へおいでください。