いわなみ家の話
第24話
「昼寝(ただいま業務中)」
「っーてことは、今日も寝てないってことですよね?」
ひとしきり続いたお客様の列がなくなったころ、毎回ひょっこりたずねてくるのが、裏の家のケイコちゃんです。
歳は私より6つほど下で、お互い婆ちゃんになったら、漬け物でも出して縁側でお茶飲みするであろう仲です。
【本日完売しました】の看板を出し、パン陳列用のザルを片付け、ケイコちゃん差し入れのジュースを飲んで脱力タイム。
お尻に根っこが生えた店主はなかなか立ち上がれません。
「そろそろ退散しますから寝てくださいよー」と、店主を促すケイコちゃん。
この日も深夜1時のオールナイトニッポンを聞きながら朝までパンを焼き、そのまま午前10時30分の開店時間を迎え、完売まで走り切りました。
ケイコちゃんのみならず、我が娘たちも、
「ママは、今昼寝中!」
の意味を、正しく理解してくれています。
「寝かせて。昼寝もおしごとのうちなの!」
と娘らが2歳の頃から言い聞かせています。
最近になってやっと、馬乗りになって叩き起こされることがなくなりました。
私が新聞社にいたころ、仮眠室という薄暗い部屋があって、歯医者のリクライニングシートみたいなのがずらりと並んでいました。
ちょっと横になれば、その後の仕事効率が良くなるのに、仮眠室の扉を開けるのはどうも後ろめたくて。サボってると思われるんじゃないかと。
仕事に家事に子育てに、疲れたら、大手を振って「ちょっくら寝てくる!」。
そんなふうに言い切れる雰囲気にならないかなあ、我が家だけじゃなく、世の中全体が。
と思っていたら、先日の福島民友新聞(別刷り「TOUCH」)に、台湾在住の青木由香さんが台湾人の「元気の秘訣」をレポートしていました。
それによると、「台湾の小中学校には昼寝の時間があって昼食後に机に突っ伏して昼寝をする」のだそう。さらにはこの習慣が社会に出ても続いていて、「昼休みには昼寝のために電気を消す会社も多い」。
なんてうらやましい!
強制的に昼寝タイムが設けられたら、罪悪感なんて背負わなくても目を閉じられたのに・・。
昼寝のほんの2、30分。この威力はすごいもんがあります。
誰に遠慮することもありません。
もし、「いつも寝てるよね」って言われたら?
「いつも働いてるから!」って胸を張って答えましょ。