「無職で家を買う」

いわなみ家の話

第15話

「無職で家を買う」

移住地に決めた会津美里町は、人口約2万人。

お隣の会津若松市まで車で25分、コンビニ、ドラッグストア、スーパーまでは車で5分、マックやミスドやドトールはないけど、歯医者とファミリークリニックはあるような、ほどほどの田舎です。

明日どうしても手に入れたいものがあるなら、Amazonプライム。

さて、移住地を決めても、家を買わなければ住めません。

家は、マジ、縁。

空き家バンクに掲載されていた、一軒の赤い屋根の古民家に私はときめいてしまったのです!

実際に内見させてもらっても、トキメキ妄想は膨らむばかり。

囲炉裏に薪ストーブ、太さ40センチはあろうかという黒々とした梁、栗の大黒柱、高い天井、築100年超の古民家は、まるで民俗博物館のようです。広大な庭には大きなモクレンがそびえ立っていて、磐梯山が望めます。

でも、空き家バンクを利用するには、家の売り手と買い手の登録が必要。

身元調査としての警察への照会(私は暴力団と関係ありません!の証明)や、住民謄本の提出など、なかなか時間がかかります。

手続きが完了するまでは、指をくわえて待っているしかありません。

実際、インターネットのトキメキ物件に「商談中」が表示されたこともありました。内心、破談してくれ~と祈ります。

縁と運が味方して、やっと我々に交渉権がまわってきました!

優柔不断の夫を説得し、ついに家を買うところまでこぎつけました。

でも、無職ジリ貧夫婦がどうやって家を買う?銀行はもちろん、誰もお金を貸してはくれません。

こうなったら最後の手段。

へ、そ、く、り。

 

 

私は会社員時代のゆうちょ銀行の定期預金をくずしました。満期直前だったけれど・・。

夫も同額の札束(!)を引き出して、売り主さんのもとへ出向き、弁護士同席のもと、キャッシュで支払いました。

いよいよ、貯蓄の底の底が見えました。

 

その昔、夫からは、「新築の家を建ててあげるよ」って、聞いたんですけど・・。

まあ、いい!

この古民家を手に入れられただけで、満足。

底を見たら、這い上がるしかない。