「週末コンプレックス」

いわなみ家の話

第77話

「週末コンプレックス」

ゴールデンウィークの昼下がり、買い物の帰りに車で通りががった阿賀川を見下ろしてびっくり。

河川敷を埋めつくす色とりどりのテント、ゴツい車。

信号で止まっていたら、焼き肉のタレのあの香りも車内に入ってきて、「THE 家族!THE キャンプ、バーベキュー!」と1人で叫んでしまいました。

姉妹がまだまだ幼かったころ、わたしは極度の「週末コンプレックス」でした。

週末どころか、花見シーズンもゴールデンウィークもお盆も消えて無くなれ~と思っていました。

「ナイスボール!」「ナイッシュー!」

当時住んでいた借家の窓からは、毎週末、隣の家のパパと少年がキャッチボールやサッカーをしている姿が見えました。

「この子が男の子じゃなくてよかった。キャッチボールはとても無理や…」

まだ歩きもしない次女を胸に抱えながら、本気で思ったものでした。

のぞき見して腐ってる場合じゃないぞ!と、弁当をもって公園に行っても、「THE週末家族」がウヨウヨ。

サイクリングコースでレンタルした「ファミリー向け」自転車に乗り込み、ペダルにほとんど足が届かない2人を乗せて…、大汗かいて坂を昇りきったあとは、心身ともに打ちのめされた気持ちでした。

ならば週末に仕事をしようと、土曜日にも自宅パン教室を開催。

上の子は、平日幼稚園、土曜日は一時保育が可能な保育園へ。下の子はパン教室中、おんぶ紐で背中に固定。

ほどなく、母子ともに疲弊していきました。

ここらで、勘のいい読者さんは、「パパどこいった?」と思うでしょう。

ほんとに~(笑)どこいった?こっちが聞きたい!

当時、夫は「震災後の福島を撮る」という十字架を背負って、前だけを向いていたので、女子たちの「おーい!バブー!」の声は届かず…。

週末の日曜にパン屋を設定して開業したのは、週末コンプレックスのたまもの。

子供たちを巻き込んで楽しめるイベントを家でしちゃえばいい。

TKしない。TK。何の略か分かりますか?

小室哲哉さん(笑)?惜しい!あなた同世代。

答えは、頼らない、期待しない。

TK(頼って期待する)から、ダンナが不在でアタシはワンオペだとか愚痴るハメになる。

TKしないでいた結果、写真家の夫は大工として縁側をDIYし、庭師として庭木を整備してくれるまでに(バブーの声やっと届く?)。

縁側パン屋でたくさんのお客さんと過ごせて、週末コンプレックスがなくなったのは言うまでもありません。

 

 

 

 

 

 

「鼻の穴にズームイン」

いわなみ家の話

第76話

「鼻の穴にズームイン」

世の中がコロナ禍となって、はや幾年…

遅ればせながら、この度zoomミーティングなるものに招待され、参加しました。

愛用のAQUOSケータイにアプリをインストールして、ホストから招待されたアドレスをクリック。

ほかの参加者さん4名の顔は見えていますが、あたしの顔は真っ暗。

そんなの簡単。イージー、イージー。

ビデオカメラマークを押すと自分の顔が画面に出ました。

お次は音声が聞こえません。

立ちはだかるオンラインの壁。

イージー、イージー?

音量ボタンを最大にしても、あれ?マイクのボタンを押してみても、あれ?

参加者のみなさんが口をパクパクしているだけ。何も聞こえません。

「音が聞こえません」と紙に書いて内臓カメラに掲げようかと思いましたが、さすがにそれはアナログの極みなので、いったん「退出」ボタンを押して、ドロン。

すぐさま友人に救助要請の電話をすると「もしかしてスマホでやってる?」

え、そーだけど、何か?

レスキュー隊員のおかげで音声も出るようになり、約10分遅れてめでたく参加。

しかし、会議中、どれだけスマホがzoomに向いていないかを思い知りました。

  • スマホをテーブルに立て掛けてみるも、カメラが目線よりかなり下になるため、アゴが伸び、鼻の穴が異様に強調された顔に映る(ブサイク~)
  • 操作をしようとスマホ画面にタッチするたびに、指先や腕がでっかく画面に映り込む
  • 映り込むだけならまだしも、時折スマホがズルッと倒れては、天井の照明を映し出す(マヌケ~)
  • スマホ画面は分割されて4人を同時に映すが、5人目の参加者は次の画面に表示される

司会役の青年会議所の方が「では資料をご覧ください」と言っても、5人目の人がしゃべっていても、私はスマホ画面を触れない事情があるのです。

いちいち巨大な人差し指が画面に映るし、触ればまたスマホがズルッと倒れるかもしれない。

背景に映り込むからって、部屋の掃除してる場合じゃなかった。鼻の穴が大きく映らないようにテストしておくんだった。

会議の30分間、終始、自分の鼻の穴が気になって気になって…会議は突然終了しました。

また訳わからんこと起きた。終わり?

次の電話の相手は実家の母。「もー、お母さん聞いてよー。zoom初めてやったらさ、鼻の穴が、もう、大きくてやだー!」

zoomについては母が先輩。九州大学のボランティアスタッフとして働いていましたが、近年はzoom会議ばかりだそう。

「あんたそれ、ミュートになってたんじゃないの?それから、無料のミーティング時間は40分でしょ?休憩はさんで再開する人もいるよね」

へーそうなんだ、どゆこと?

母との長電話を終えてメールの受信ボックスを開くと、「ホストがあなたを予約されたミーティングに招待しています」のメールが。

やばー。2回目のミーティングすでに終わってた…。

来月、会津青年会議所主催の「會津で夢を見よう~会津の魅力発見」にて、移住者として、また、起業者として、トークセッションしてきます。

zoomは苦手だけど、talkは得意よ~!

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉妹の初恋」

いわなみ家の話

第75話

「姉妹の初恋」

 

小4と小2の娘が同じ男の子に恋をしています。

彼の名前は天沢聖司(あまさわせいじ)くん。

天沢くんは、1995年のジブリ映画「耳をすませば」主人公・雫ちゃんの初恋の相手ですけどね~。

図書館で借りたDVDを何回もみて姉妹はワーキャー騒いでおります。初めての胸キュンかしら♡

DVDケースをひっくり返してみると

  • 天沢聖司…高橋 一生
  • 雫の父…立花 隆

27年前の高橋一生さん、声変わり前の声の出演だったそうです。貴重!

もうひとつ貴重なのが、故・立花隆さんの声がたまらない、劇中のセリフ。「高校には行かない!」と言う主人公の雫(中学3年生)を諭すシーン。

「自分の信じるようにやってごらん。でもな、人と違う生き方をするのはそれなりにしんどいぞ。何があっても人のせいにはできないからね」

(いまどきの言葉で言うと)刺さる、刺さる、立花さんだからこそ、刺さる~!聞いたかー、娘たちよ?!

そして母ちゃんはもう一言付け加えたい。「人と違う生き方はとんでもなく楽しいぞ」。

雫と聖司の10年後を描いた実写映画がこの秋公開予定だそうです。

「雫と聖司、チューするかなー、結婚するかなー?!」

おーい、母ちゃんの話、聞いてんのかー?

 

「37番のお客さん」

いわなみ家の話

第74話

「37番のお客さん」

先週の日曜日は、テレビ放送後の営業ということもあり、たくさんのお客さんで賑わいました。

オープンの1時間前に「お名前記入シート」を縁側に出しておき、ご来店の順に名前を書いてもらうようにしています。

10時25分

「ママー、いまんとこ32番」。部屋の中から縁側をのぞき見するのも、チビスタッフの仕事。

縁側の窓を開け、集まったお客さんに声をかけます。「いらっしゃいませー!お名前書いてない方、ここにどーぞー」

10時30分

後にも先にも、こんなにパンの数焼くことはないだろう…というくらい夜通し焼いた230個のパンを縁側に並べ、いざオープン。

店主とスタッフ2名のいる縁側から離れた、駐車場のほうにもお客さんが取り巻いているようでした。

その中のひとり、「10時20分ごろに到着した37番のお客さん」が、当日の様子をレポートしてくれています。

https://www.r2fish.com/index/2022/04/24/iwanamike/

1個のパン、「いろんな意味で美味しかった」とおっしゃっていました。

あったかい。

また焼きます。

 

(注釈1)いわなみ家開業は2019年12月

(注釈2)テレビ放送は日曜日の夕方にも再放送がありました

 

 

 

 

「おい、フジイ!」

いわなみ家の話

第73話

「おい、フジイ!」

 

朝4時。約束どおり彼女はやって来ました。

小型カメラ(ムービー)と三脚を担いで「(静かに)おはよーございますー」。チャイム押さずに玄関から勝手に入って正解。子供たちは奥の部屋で寝ているからね。

こちらといえば、ベーグルを成形する手を休めることなく、「適当に座ってね、今コーヒーいれるからねー」と声をかけたっきり。

生地のほとんどは発酵のピークを迎え、オーブンは絶え間なくピーピー鳴ってパンが焼き上がります。

そう、一番忙しい時間に彼女を呼んだので、コーヒーいれる暇はありません。

「やば、今日の取材たのしいっす!」

次々に焼けるパンをカメラで追いかけたり待ち構えたり、オーブンの中をのぞいたり。

かと思えば、「いわなみさん、外、朝焼けすごいです。タイムラプス(コマ送り撮り)したらいいかも」と言って飛び出して行ったり。

彼女の名前はフジイちゃん。地元テレビ局のディレクターです。

実は、テレビの取材はこれまでいくつかお断りをしてきました。理由はいくつかあって

・反響が大きすぎる

・仕事の時間以外に「パンを(取材用に)用意してください」などと要求される

・取材時間が長い

など。

取材のためにパン屋をしている訳ではないし、そもそも多くのお客さんに来ていただいて「マニアッテマス」状態(笑)なので。

でも今回取材を受けたのは、ひとえに、フジイちゃんの姿勢と性格。

 

てろんてろんのパジャマ姿で、目を擦りながら起きてきた娘たち。

「あ、この前の…」

朝起きて知らない人が居たわけではありません。フジイちゃんは、この日以外にも、いわなみ家に何度か通ってくれていました。

「ねー、フジイちゃんも目玉焼き食べるー?」

すぐに子供たちともうちとけて(本人いわく精神年齢低めだから?笑)、朝食まで一緒に食べることに。

フジイちゃんが子供たちにヒソヒソ話をしていました。

「このあと、男のカメラマン来たらさ、『おい、フジイ!』『は、はいっ!』って感じになるけど、笑わないでよ~」

娘1「おい、フジイ!」

フ「は、はいっ!」

娘2「おい、フジイ!」

フ「は、はいっ、今すぐ!」

 

さてさてパン屋開店前に、カメラマン、音声さん、レポーターさんが到着しました。

「今、聞いた?おい、フジイってぇ~」

娘たちも、フジイちゃんの仕事ぶりをウォッチしていました。

でもなんだか、その「おい、フジイ」には愛が込もっていたような。

人たらし、フジイちゃんが取材した「いわなみ家」は4月19日(火)夕方、福島県内で放送予定です。